幕間 アリスの思い
此処は魔族領にあるアリスの屋敷。
「人間領に移住したい魔族のリストは出来てる?」
「はい、此方にございます。」
そう言って秘書がアリスに書類を渡してきた。
「うん、やっぱり若い人が多いわね。」
「えぇ、今の若い魔族はアリス様の考えに賛同している者が多いですから。」
「ここまで来るのに苦労したわね……。」
アリスが新たな魔王になり、再び人間との戦争を望む声もあった。
しかし、アリスは大きな方向転換をした。
戦争では無く共存の道を選んだのだ。
不満の声も出たが、アリスは『まずは現在の魔族領の立て直しが優先』と突っぱねた。
実際、長年の人間族との戦争で魔族領は深刻な被害を受けていた。
このまま人間族と戦っていても魔族には何にも得が無い。
そこでアリスは人間との共存を選択したのだ。
この事をアリスは根気よく説明した。
絶対権力を持つ魔王なので別に説得する必要はないのだが、アリスはあえて説明をした。
「おかげで徐々に理解をしてくれる者も出て来たし……。」
「しかし、何故アリス様はあえて困難な道を選んだのですか?」
「私ね、暴力で人は支配できない、と思うのよ。話し合う事が一番大事で、それが出来なくなってから初めて実力行使に出ても良いと思うの。」
「やはり、ご家族の事が……。」
「そうね、お兄様達には『出来損ない』と言われて暴力を受けて……、でもお兄様達が亡くなって私が魔王になるんだから皮肉な物よね。一番魔王に相応しくない私が魔王になってしまうんだから。」
そう言ってアリスは苦笑いをする。
「そんな事は無い、と思います。アリス様が新しい魔王像を作ればいいのです。『心の優しい魔王』を。」
秘書がそう言うとアリスは顔が真っ赤になった。




