元勇者、密かに決意する
「それで・・・・・・、どうしてこの村に来たんだ? しかも昨日は雨が降っていたにも関わらず。」
「それは・・・・・・。」
サーニャは掴んでいた布団をギュッと強く握りしめた。
「まぁ、事情があるだろうし、無理には聞かない。話したくなったら話せば良い。ただ、親が心配しているだろう。とりあえず、ご両親には連絡をしておいた方が良い。」
「そうですね・・・・・・。私の父は騎士団の総団長を勤めております。我が家は王都にあります。」
え?総団長?
もしかして、この子はガーザスが言っていた例のバカ王子に婚約破棄された令嬢か?
「ノエル、もしかして・・・・・・。」
「あぁ、かもしれないな。」
どうやら、サラも同じ考えみたいだ。
だったらガーザスを通じて連絡をとった方がいいかもしれないな。
「あの、本当にご迷惑をかけて申し訳ありません。すぐに帰りますので・・・・・・。」
そう言って立ち上がろうとしたがフラッと倒れそうになったので支えた。
「無理をしちゃ駄目だ。あんな雨の中歩いてきたんだから体力が回復してない。暫くは家で養生しておいた方が良い。ご両親には俺から言っておくから。」
「良いんでしょうか・・・・・・?」
「あぁ、別に構わない。」
そう言うとサーニャの目から涙がスーッと流れた。
「おいっ、どうかしたか? 俺、何か言ったかっ!?」
「いえ、その、・・・・・・ここ最近色々あって心の中が混乱していて・・・・・・、だから、優しい言葉をかけて下さって・・・・・・、嬉しかったんです。」
泣きながらもニッコリと笑うサーニャ。
こんな可愛い子を泣かすとは・・・・・・。
あの、バカ王子にはケジメをつけさせなきゃいけないな。
そう決意した。
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