勇者、何とか生き残る
「うーん……」
俺こと『ノエル・ビーガー』は、瓦礫の中で目を覚ました。
「隙間に挟まっていたみたいだな……」
俺の上にある瓦礫を退かしながら這い出し、辺りを見回す。
「跡形も無く、みごとに崩れ去ったもんだなぁ」
見渡す限りの、瓦礫の山だった。
「さて、これからどうするかだなぁ……」
俺は置いてけぼりにされた。
「多分、今頃あいつらは国に帰って、都合の良い報告をしているんだろうなぁ……」
正直、仲間――いや、元仲間の裏切りはショックだ。
特に、幼馴染みで聖女として一緒に旅をしていた『ステラ・ミラール』が、いつの間にか王子と結婚するという話になっていたのは、寝耳に水で、かなりダメージがあった。
小さい頃だけど、結婚の約束していたのになぁ……。
戦士の『グダール・カファン』、魔法使いの『アイナ・ネカール』も、信頼できる仲間だと思っていたのに……。所詮俺は、戦う事しか能が無い、使い捨ての道具だったんだな。
「疲れたなぁ……。とりあえず此処を出るか。あ、そうだ」
俺は着ていた鎧を脱いだ。
下には勇者になる前の、冒険者としての服を着ている。
これなら、どこから見ても勇者には見えないはずだ。
「勇者ノエル・ビーガー……此所に眠る、と」
瓦礫の山に、聖剣と鎧を置いた。
勇者としての俺は、死んだ。
これからは、ただの『ノエル・ビーガー』として生きると決めたのだ。
例え魔王が復活しても、救ってなんてやらん。
勇者なんてもうこりごりだ。
これからは、ゆっくりまったりな人生を送るぞ!
俺は来た道を戻るために、歩き始めた。