元勇者、世界情勢を知る
リリアはケイレル国にいる王女に手紙を出した。
それから二日後に返事が来た、ていうかその王女本人が自らやって来たのだ。
「はじめまして、ケイレル国第一王女の『レイチェル・ケイレル』と申します。一目勇者様を見たいと思いまして参りました。」
やはり俺の名前は世界に広まっているんだな。
「しかし、ケイレル国ってシュヴィアから結構遠い所にあるんだろ? よく来れたな?」
「そこは勿論『転移魔法』で来ました。」
「そういえば、ケイレル国って魔法文化がかなり発達していて国民はみんな何らかの魔法が使える、て聞いた事があるわ。」
アイナが補足してくれた。
「わざわざ来ていただいてありがとうございます、レイ様。それで前回のお茶会の様子はどうだったんですか?」
「ひどい有様でしたわ……。前回参加したのは私を含めて4人だったんです。『コバルト国』、『ケンビア国』、『トーリア国』の王女が参加したんですが、タイミングが悪かったんです。コバルト国の『メイア』様はつい最近婚約して婚約者自慢をしてきたんですが、ケンビア国の『アミア』様が同じ時期に婚約が破談になってしまい……。」
「うわぁ……、本当にタイミングが悪いな。」
「元々メイア様とアミア様は仲があまりよろしくなくて……。学生時代は取っ組み合いの喧嘩をしているのも何回か見た事あります。」
「あぁ~、あれは学園の名物でしたからね。……まさか?」
「メイア様がアミア様を挑発して、アミア様が売り言葉に買い言葉で……。まぁ、すぐに近くにいた兵士が止めに入りましたが、私とトーリア国の『ミネルバ』様は二人でガタガタ震えてました。」
「コバルトとケンビアは昔は一緒の国だったらしいけど、色々複雑な事情で別れてしまって今も遺恨が根強く残っていますから、それもあるかもしれませんね。」
なるほど……、こりゃあちょっと大変な事になりそうだな