元勇者、サキュパスの怖さを語る
魔族と王族の協力が結ばれた事で話は順調に進んだ。
王家主宰の社交パーティーを開催し、そこに魔族を潜ませリデラック家の『マセラン・リデラック』を会わせる。
そこから蟻地獄の如くズブズブ嵌まってもらい気付いた時は取り返しのつかない状態になっている、という事だ。
「そんなに簡単に上手くいきますか?」
リリアが疑問を投げ掛ける。
「そういうのが得意な種族がいるからな。」
「あっ・・・・・・、『サキュバス』ですか。」
「なるほど、あいつらにかかってしまえばどうしようもないな。」
サキュバスの恐ろしさは良く知っている。
「そういえばグダールが罠にかかった事があったわね。」
アイナが思い出した様に言う。
「何かあったんですか?」
「かつての仲間が人間に化けたサキュバスにコロリと騙されたんだよ。アイツらは『魅了』の力を使うからな、一種の洗脳と一緒だ。キスしただけで虜にしちまうからな。」
「それはノエル様も?」
「いや、俺はそういうの効かないから。」
「そういえばステラもインキュバスに騙された事があったわね。思えばアレから聖女らしさを無くしていったわね。」
サキュバスに1度取りつかれた者は自分の欲求に素直になる、と聞いた事がある。
ステラもグダールもサキュバスに取りつかれた時点で転がり始めたのかもしれないな。
ひょっとしたらレバニアの旧王家もサキュバスに目をつけられていたのかもしれないな・・・・・・、考えすぎか。
「こ、怖いですね・・・・・・。」
「敵になればな、しかし味方になれば心強いぞ。」
後日、アリスがサキュバスの少女を連れてきた。
「『メイ』と申します! よろしくお願いします。」
「サキュバスの中でも身分が高いから今回の件にはピッタリだと思うわ。」
メイと名乗ったサキュバスは色っぽさよりも可愛さがあった。
ただ、出る所は出ている。
「身分が高い、て言ったけど魔族にも身分制度があるんですか?」
「えぇ、貴族もいれば奴隷もいるわ。メイの家はサキュバスの中でも上位貴族だから。」
なるほど、確かに適役だな。




