元勇者、魔族と秘密の約束をする
「何か方法があるんですか? 相手は散々騙してきてるんですよ?」
「だからこそ、自分達が騙される訳が無い、て思っているはずだ。その心の隙をつくんだよ。」
俺はにやりと笑った。
「もしかして……、魔族に協力してもらうつもりか?」
流石はサラ、よくわかっている。
「魔族? まぁ、魔族とは今は友好的な関係を築いていますけど……、協力してくれますか?」
「多分、いい返事をしてくれると思うぞ。」
なんでこんな確信めいた事を言えるのか。
実は以前アリスから『ある話』を聞いた。
魔族領は現在深刻な人手不足に陥っている。
勿論、俺が魔王討伐の時に魔物達を倒した事もあるが、それ以外にサラの様に奴隷として魔族を浚ってくる輩がいるらしい。
『同じ事をしたらお互いの関係に影響が出る』というのがアリアの意見だ。
なるべく穏便に、お互いの得になるような事になればいい。
そこで、思いついた。
人間にとって害になるような輩を魔族に引き取ってもらえればいいじゃないか。
魔族だったら人間の階級なんて気にしないだろう。
その話を後日、アリスにしたら案の定乗ってくれた。
また、サリウス王にしたら、こちらも乗ってくれた。
被害相談は受けているのだが歴史的に名門な家の為、そう簡単に手を出せなかったらしい。
こうしてリデラック家を嵌める計画が動き出した。