元勇者、没落令嬢に会う
目的の同盟の話は終わったのでその後はお互いの近況等を話し合った。
「そういえば、親父さんは元気にしてるのか?」
「はい、少しずつ体調が回復して今は散歩に行けるぐらいまでになりました。」
「そりゃあ良かった。」
と、メイドが飲み物を運んできた。
「お、お嬢様、紅茶とケーキを持って参りました。」
入ったばかりなのか、そのメイドの動きはぎこちなかった。
リリアの方を避けている様な気がするんだが・・・・・・。
「・・・・・・『マリーナ』?」
「っ!? ち、違いますっ!! 私はメイドのマリーと申します! 決して侯爵令嬢ではなくてですねぇ・・・・・・!」
「明らかに焦りすぎでしょ・・・・・・。」
「知り合いなのか?」
「はい・・・・・・、元は結構名門な侯爵家で私達とは同級生だったんですが、領地の改革に失敗してしまい家が破産してしまったんです。」
「でも確かメランとマリーナは仲は余り良くなかったはずじゃ? て言うか、いつもマリーナがメランを苛めていたじゃない?」
そう言ってリリアはマリーナに冷たい視線を送る。
「うぅ・・・・・・、その節は申し訳ありませんでした・・・・・・、でも今はメラン様がご主人様でして・・・・・・。」
「どういう事だ?」
「えっとですね・・・・・・、学校卒業後は私はお父様のサポートをしなければいけないので社交界には余り参加してなかったんですが、マリーナは卒業後に侯爵家に嫁入りしたのはリリア様も知ってらっしゃると思いますが。」
「えぇ、自慢していたのを覚えているわ。」
「それから1年後にたまたま王都で再会したんです。・・・・・・『奴隷』となってしまったマリーナと。」
「・・・・・・え?」
「その時には、既にこの性格になってしまっていて・・・・・・、奴隷商人曰く『夫がいたにも関わらず不貞をして実家を破綻に追い込んだ悪女』だそうで・・・・・・。」
「それでメランは買ったのか?」
「はい。」
「そこまでする義理は無いでしょ? 結構見下されていたのを知ってるわよ。」
「それでも、ちょっと疑問があったんです。名門の出であるマリーナがそんな不貞を働く様な事はしない、と思ったので。」
「マリーナ、実際はどうなの? プライドが高かった貴女が不貞を働いたなんて私も余り信じてはいないんだけど。」
「・・・・・・私の事を信じていただけるんですか?」
リリアはコクりと頷いた。
「あ、ありがとうございます! 家族も誰も信じてくれなかったんです・・・・・・。私は何もしていません! あの男は最初から我が家の財産狙いで我が家を乗っとる為に私と結婚したんです。目的を達成した後、私は変な言いがかりをつけられて離縁されて奴隷として売られてしまったんです・・・・・・。」




