元勇者、毒の霧を超える
そんな話をしながら、俺達は森の中を歩いていく。
「そう言えば、その『ヤマブキソウ』てどんな野草なんだ?」
「私も実物は見た事ないんですが、豊かな自然にしか存在しない、光り輝く野草と聞いています。」
「私も存在は聞いた事ありますが、人が寄りつかない場所に生息しているそうですよ。」
そんな貴重な野草がこの辺にあるのか……。
「市場にも出回る事は無くて、地元の人でもなかなか見る事が出来ないらしいです。」
「もしかしてノエルは見た事あるんじゃないの?」
「いや、この辺の野草は大体採って来たし何が生えているかは大体知ってるつもりだ。でも、そんな野草は聞いた事が無いな……。て言う事は俺が立ち入った事のない場所にあるかもしれない。」
「その立ち入った事のない場所って?」
「この森の先にあるんだけどな、そこは有毒ガスが地中から発生して近寄れないんだ。」
何人か麻痺で教会に連れてこまれた人を見た事あるけど、凄い光景だった。
「それだったら、私の『状態回復』で何とかなるかもしれないわね。」
その時はアイナに任せる事にしよう。
そして、しばらく歩くと森の光景は徐々に変化し始めた。
空気は淀んできて日が昇っているにも関わらず薄暗くなってきた。
奥まで来た、と言う事だ。
「アイナ、頼む。」
「わかったわ。」
アイナに『防御魔法』をかけてもらう。
これで多分麻痺にはならないはずだ。
そして、目の前に紫色のモヤモヤした霧みたいな物が出てきた。
「これが有毒ガスみたいですね。」
「一気に抜けるぞ、みんな一瞬だけ息をするな。」
俺の合図で一気に駆け出した。
それは本当に数秒の事だが、とにかく吸い込まないように必死に走った。
「はぁはぁ……、みんな大丈夫か?」
「大丈夫よ……。」
「体は普通に動きます。」
「走る方が大変でした……。」
クワイアは料理人だからなぁ。
とりあえず有毒ガスは乗り越えた。




