元勇者、補佐官を歓迎する
そして数日後、シュヴィア国の紋章がついた馬車が到着した。
「お兄様っ! 『リリア・シュヴィア』、到着いたしましたっ!」
赤い短い髪で活発そうな少女、それが最初のリリアの印象だ。
「よく来たね。こちらが補佐をしてもらうこの村の村長兼領主のノエル殿だ。」
「ノエル・ビーガーだ、よろしく頼む。」
「リリアと申します。兄がお世話になっているそうで……、これからよろしくお願いいたします。」
流石は王族らしく礼儀はちゃんとしているみたいだ。
「まずは住まいの件だが……。」
「それでしたら大丈夫です。兄と一緒に住みます。」
その発言を聞いた瞬間、シュバルツが固まった。
「いやっ!? 流石にそれはまずいだろっ!? お互い成人した身だぞっ!?」
「何を焦っているんですか? 別々の部屋に住めばいいじゃないですか?」
キョトンとしているリリア。
あぁ~、この村の住宅環境の事を知らないんだな。
「リリア、シュバルツが住んでいるのは一般住居なんだ。お城や屋敷とは違うんだよ。」
「そういえば、この村にはお屋敷が見当たりませんね?」
「その屋敷は前の村長が住んでいたんだが今は別の住人兼客人が泊めれる宿泊施設にしてある。だから、リリアにも一人暮らしをしてもらおうと思っている。」
「ひ、一人暮らし? あの、と言う事は食事は?」
「もうすぐ食堂がオープンするけど基本は自炊だ。勿論家事も自分でやってもらう。」
俺の発言を聞いた瞬間、リリアは固まった。
そんな難しい事を言った訳じゃないんだけどな。
その理由を後でシュバルツが教えてくれた。
どうやら、リリアは家事をやった事が無いらしい。
メイドや部下がやっていてくれたらしい。
よくよく考えてみれば王女様なんだから当たり前なんだが。
「リリアは所謂庶民の生活に疎いんですよ。多分、泣きついてくるでしょうね。」
暫くは家事のサポートも必要か?




