元勇者、王都の現状を知る
その日の夜にガーザスが酒を持ってやって来た。
兵士姿では無く、かつての冒険者の格好で。
「こっちの方が落ち着くんだ。兵士とか貴族の着飾った格好はどうも堅苦しくて嫌なんだ。」
うん、性格が変わってなくて良かった。
酒を飲みながらお互いの現状を話した。
「やっぱりな、あのポンコツ王子が魔王を倒すなんておかしい話だと思っていたんだ。」
俺が魔王討伐直後の話をしたら何か納得してくれた。
「それでも、王族に近い奴等は信じてるみたいでな、俺みたいに疑問に思っている奴もいるにはいるんだが表立って反論出来無いんだ。何せ国が正式に発表しちまったからな。」
「そうか・・・・・・。王都の様子はどうなんだ?」
「魔王討伐直後にはお祭り騒ぎだったよ。凱旋パレードをやったり、銅像を建てたりとか。流石に庶民は落ち着いて来たけどな。」
「・・・・・・元仲間は?」
「ステラは王子との結婚が発表された。グダールはいきなり騎士団の重役に、アイナは宮廷お抱えの魔術師として国の相談役になった。」
「優遇しすぎだろ? 異論か何か出なかったのか?」
「世界を救った英雄だからな、でも影で泣いている人物がいるのも事実で、王子には婚約者がいたんだが破棄されたらしい。」
「略奪したのかよ、ステラは・・・・・・。」
「略奪って言うか王子は元々その前の婚約者は好きでは無かったらしい。ステラは美人だしスタイルが良いからな。王子が一目で気に入ったみたいだ。俺は正直、聖女というより悪女だと思っている。」
「でも、その前の婚約者の親御さんは黙ってはいないだろ?」
「王族には逆らえないからな、でも内心は膓は煮えくり返っているはずだ。その父親って言うのが俺の上司で『鬼将軍』と呼ばれている人物だ。今は黙っているがいつ噴火するかわからない状態だ。」
「敵に回してはいけない奴を敵に回したのか・・・・・・。」
まぁ、王都の近況はわかった。
だからといって俺は何もしないし、王都には行かない。
漸く、今の生活が楽しくなってきた所だ。
とりあえず、ガーザスとは定期的に連絡を取る事にした。