元勇者、王妃と会う
それから数日後、シュバルツが再びやって来た。
今度は大きな荷物を持ってきて……。
「まさか、家出したのか?」
「そうじゃないですよ。父上の命で『暫く避難していろ』と。」
避難って……。
「母上が明日戻ってくるんです。城内は今、大慌てなんですよ。」
「大慌てって……、もしかして『もみ消し』か?」
「まぁ、無駄なんですけどね。母上には報告がいってますから。」
そう言って苦笑いするシュバルツ。
「母上は不正とかを絶対に許さない人です。どんなに名門であっても母上ににらまれたら即アウトです。」
「元々が騎士だから、正義感が強いんだろうな。て事は俺の事も?」
「勿論です。」
あぁ~、もしかして俺、会わなきゃいけないかもしれないなぁ……。
しかも、明日って言ったら国に報告しに行かなきゃいけない日じゃないか……。
翌日
シュバルツと共に登城した俺。
城内は何というかピリピリしている。
普通は歓迎モードだと思うのだが。
そんだけ王妃と言う人物が恐れられている、と言う事か。
場内の大広間には貴族や領主達が集められている。
まぁ、当然俺もその中に入っている。
そこへサリウス王が入ってくる。
「諸君、知っての通りだが、我が妻である『クラリス・シュヴィア』が本日より我が国に帰還し、国政に復帰する事になった。これよりクラリスより挨拶がある。心して聞くように。」
そう言うと、一人の女性が入って来た。
「皆様、ご無沙汰しております。実家の方で問題があり色々ありまして、不本意ながら国政を長い間離れておりましたが、こうして復帰させていただく事になりました。今後ともよろしくお願い致します。」
そう挨拶する俺は王妃の顔を見て驚いた。
「え……。」
だって、俺、会った事あるよ。
勇者時代に一瞬だけど一緒に戦った事あるよ。