元勇者、シュヴィア王族の家庭環境を知る
「今日も異常なし、と。」
俺は自分の部屋で書類を書いていた。
領主の仕事として国に報告義務があり、月一で報告書を提出している。
最初はなれない書類との格闘に苦戦していたが最近はなれてきた。
ていうか、何かしら報告しなくてはいけない事がおこるから書く事には足りているから。
まぁ、その都度シュバルツに来てもらっているのが申し訳ない。
そんなシュバルツだが最近目に見えて疲労が溜まっているように見える。
此処に来る回数が明らかに増えてきている。
もしかして城内で何かあったんだろうか?
て言うか、今目の前にいるし。
「もう夜だぞ? 城に帰らなくていいのか?」
「正直、今は帰りたくないんですよ……。」
「いや、一国の王子が領主とはいえ民間の家に泊まるのはまずいだろ。何かあったのか?」
「……母上が戻ってくるんです。」
「母上、て王妃様て事か?」
「はい……。」
そういえば、王妃様に会った事ないな。
「王妃様てどんな人なんだ?」
「母上は『シュヴィアの姫騎士』と呼ばれるぐらいで女性で初めての騎士団長を勤めてそれを父さんが戦場で駆け回る母上を見染めて結婚したそうなんです。今でもシュヴィアの女性の憧れですよ。アンジェも憧れてますし。」
「そういえばアンジェも騎士団に入っている、て聞いた事あるけど……。」
「完全に母上の影響です。」
「その王妃様が戻ってくる、て今まで別々に暮らしていたのか?」
「えぇ、実は母上の実家でトラブル、家族間の問題があって母上は解決する為に実家に行っていったんです。それは解決できたんですが、そこから領地内でトラブルがおきて解決する為にずっと実家にいたんです。ようやく落ち着いたので王都に戻ってくる事になったんです。」
「よかったじゃないか。家族で生活できるのであれば。」
「僕達は良いんですよ。ですが城内はそうでもないんです。母上が戻ってくることで都合が悪い人達がいるんです。」
「反対派、て言う事か?」
「母上がいない事を良い事に好き勝手やってくれてましたからね、前に長兄が婚約破棄した、て言ったじゃないですか。」
「あぁ、聞いた事あるが。」
「それも反対派の仕業だったんですが、何せ証拠が無いですから厳しく処罰する事も出来なくて……。でも、母上が戻ってくる事で多分これから城内は荒れますよ……。」
「それが憂鬱だったのか。」
シュバルツはコクリと頷いた。