元勇者、追及する
シュヴィア領内にあるギルド本部
シエンスのギルドよりも少し大きいぐらいの建物内にあるギルド長室
そこに『エネゼル・マコール』がいた。
「いやぁ、まさか勇者様自らご訪問してくださるとはっ!」
「一応、ダンジョンがあるのは俺が治めている領内にあるからね、挨拶だけはしておかないと、と思ってね。」
俺が自己紹介した瞬間、エネゼルは明らかにあせっていた。
俺も勇者時代にいろんな人を見てきてそれなりに人の感情を読み取る事は出来る。
あまり、歓迎されてない事はわかる。
「……こちらが今回の報告書です。」
「そ、そうか、ご苦労だったな。」
「それともう一つ見てもらいたい物があります。」
「もう一つ?」
「……過去のダンジョン攻略の報告書です。魔族側のですが。」
「なにっ!?」
「ダンジョンは元々魔族の物だ。報告書があってもおかしくないだろ? それに、向こうにも攻略者のデータがあるそうだ。確認したが、そこにはあんたの名前が無かった。あんたは数々のダンジョンを攻略したそうだが魔族側には無い、これはどういう事だ?」
「そ、それは……。」
明らかにあせっている。
間違いなく何か隠している。
「映像も残っているそうだ。見てみるか?」
「……お父様、本当の事を言ってもらえませんか? 私はお父様の事を尊敬しているんです。私を信じさせてください。」
「……。」
黙っている。
「喋らないのであれば国に訴える事も出来るぞ。」
「なっ!?」
「公の場で真実を明るみにすれば疑いは晴れるだろう。」
「そ、それは……。」
「お父様、お願いします……。」
「……頼む、国に訴えるのだけは止めてくれ! 確かに俺はダンジョンを攻略していない! 怖くなって所属していたパーティーメンバーをおいて逃げてしまった! 嘘を言って俺の手柄にしてしまった……。」
「しかも、一回だけじゃないよな?」
「……逃げ癖というのが身に染めてしまったんだ。ギルドも当時は甘くて俺の報告書はそのまま通ったし、パーティーメンバーも帰ってこなかった。だが、いつかばれる日が来るだろうと思っていた。その時は潔くこの身を引こう、と思っていた。それが実の娘に断罪されるのであれば本望だ。」
「お父様……。」
「あんたがそれだけ潔くて良かったよ、こっちも追い込みたくはないからな。でも、もう一つだけ謝らなければいけない人物がいるだろ?」
「謝らなければいけない人物?」
「マインだよ。あんた、躾としてマインに心の傷をつけてるんだよ。そのおかげでマインは冒険者として誰ともパーティーを組めなかったんだ。」
「そ、それは本当か……?」
「は、はい……。私は未だに暗闇が苦手です。昔、お父様に物置に閉じ込められ数日間過ごしました。それが未だに忘れずにいます。」
「……そうだったのか。すまなかった。」
エネゼルはそう言って頭を下げた。
後日、エネゼルは全てを話して謝罪しギルド本部の長を辞した。




