元勇者、昔馴染みと再会する
「おっ、順調に育ってきてるな。」
植えた種が芽を出してすくすくと成長している。
何事も無く育てば数週間後にはきっと実っているだろう。
楽しみが出来てワクワクしていたある日、村に兵士達がやって来た。
領内のパトロールだそうだ。
俺は虚実を含めながら自分の事を話した。
兵士達は若くて性格が良かった。
もしかして、と思ったらやはり田舎出身の者が多かった。
一旗あげに王都に行き、軍隊に入ったは良いが、ほとんど領内のパトロールやら魔獣退治やら雑用ばかりやらされている、と嘆いていた。
こんな事だったら冒険者と変わらない、とも言っていた。
気持ちはわからない訳ではないが、冒険者は自分の身は自分で護らなければならないが、軍隊は国が保障してくれるし、収入も安定している。
比較すれば冒険者になるよりも軍隊に入った方が楽なのだ。
まぁ、そんな話をしていると部隊長と呼ばれる人物がやって来た。
そいつの顔を見てビックリした。
「お前、『ガーザス』じゃないかっ!?」
「ノエルっ!? ノエルなのかっ!?」
冒険者時代に一緒にパーティーを組んでいた『ガーザス・エドハルト』だった。
「お前、軍に入っていたのか! そういえば貴族だったよな。」
「末席だけどな。俺自身は冒険者を続けたかったんだが親が許してくれなくてな。て言うか、いつ戻って来たんだ? お前、確か魔王討伐の旅に出ていたはずだよな?」
こいつは俺が勇者である事を知っている。
「まぁ、色々あったんだよ・・・・・・。」
「そうか・・・・・・、夜にまた来るからその時に詳しい話を聞かせてくれよ。」
そう言ってガーザスは兵士達と共に村を去っていた。