元勇者、歪な親子関係を知る
「マイン、心当たりでもあるのか?」
「はい……、私の父はギルド本部のギルド長なんですが幼い頃から私を一人前の冒険者にする為に厳しい教育を受けて失敗すると物置に一日閉じ込められていた事があります……。暗くてお腹が空いて寂しくて……、長い時には一週間閉じ込められた時もありました……。」
それ、虐待に等しいじゃないか?
「多分、それが原因でしょうね。『絶対的支配』ていう奴、それを直すためには抵抗するのが一番良いと思うよ。」
「抵抗、ですか?」
「そうだな……、例えば国に訴える、とか?」
「えぇっ!? そ、そんな事……。」
「いや、だって細かい部分はわからないけども今の話は間違いなく虐待だと思うぞ。マインだってわかるだろ、それぐらいは。」
「……。」
マインは俯いてしまった。
「親に自分の意志を示すのも良い事だと思うよ。それだけで人生ちょっと変わるわよ。」
その後、俺達はダンジョンを無事脱出出来て、村に戻ってきた。
「はぁ~、そんな事があったのか。」
ガダールが俺の話を聞いて驚いていた。
「そう言えば、ギルド本部とシエンスのギルドって関係がかなり悪いらしい。革新的なシエンスのギルドに対して、ギルド本部は古い体制らしいからな。」
「そうか、此処も睨まれてるんじゃないか?」
「ノエルがいるからなぁ、そこは大丈夫だよ。で、どうすんだ、マインの事は?」
村に戻ってきてからマインは上の空だった。
エルフィンや俺の指摘を受けて色々考えているらしい。
「まぁ、娘の前で言う事じゃないけど……、本部のギルド長はワンマンらしいからな。気に入らない事があるとすぐ手を出すらしい。」
ボソッと小声でガダールが呟いた。
「そんなに評判が悪いのか? それなのになんでギルド長なんてやってるんだ?」
「冒険者時代にかなりの成果をあげたらしい。それを支持する冒険者達もいるみたいで……。」
なるほどな……。
だからと言って娘を虐待していい訳ではない。
何とか、突破口になる事があればいんだが。




