元勇者、元帝国の王子を受け入れる
ある日、シュバルツが一人の少年を連れてきた。
「シュバルツ、誰だ? その少年は?」
「以前、話したと思いますけど例の帝国の……、最近、遂にクーデターが起きて滅んだんですが。」
滅んだのか、シンシアがいた帝国。
話だけ聞いていると当然の結果だと思うけど。
「はじめまして、俺は『ケイズ・ノワライド』て言います。」
「ノエル・ビーガーだ。しかし、帰る場所が無くなった、て事だよな?」
「いや、元々帰るつもりは無かったんで。」
「……そんなにひどかったのか?」
「ほぼ親父の独裁政権でしたから。俺は王子と言っても王位継承権は無いに等しいんですけど、親父の周りはイエスマンばっかりで誰も親父に意見を言える奴はいなかったんです。言ったら厳罰に処せられますからね。」
「それで、よくクーデターが起きたな。」
「近隣国が立ち上がったんですよ。帝国から亡命依頼が来て流石に見兼ねて行動に移したみたいです。」
「それで、ケイズはどうするんだ?」
「実はそれの相談で来たんです。」
「俺は冒険者になりたいんです。これからは一人で生きて行かなきゃいけないんで。」
「大陸に戻るつもりは無いのか?」
「戻っても多分居場所は無いですから……。」
そう言ってちょっと寂しい顔をするケイズ。
「……わかった。この村で受け入れるよ。ギルドも人手が欲しかったから。」
「すいません、お願いします。」
「それにうちにはシンシアがいるからな。同じ大陸出身者がいた方がいいだろう。」
「シンシア? シンシアがいるんですかっ!?」
「いるよ、確かシンシアは帝国軍に所属していたんだろ?」
「えぇ、今考えればシンシアを追放したのが帝国が滅ぶ引き金だったんですよ。」
そんなに強かったのか、シンシアは。




