元勇者、新人冒険者の事情を知る
「セイト、何があったんだ? 事情を聞かせてくれないか?」
「えっと、僕は幼馴染と一緒にパーティーを組んでいたんですけど、段々と実力に差が出てきて、気が付いたら僕はパーティーの中で一番下で雑用係をやらされていたんです。それである日遂に追い出される事になったんです。『もうすぐSランクになる。お前は足手まといで邪魔だからいらない』て……。」
ひどい話だが冒険者にはよくある話だ。
俺も追放される現場にたまたま見かけた事があるが、空気の悪さといったらしょうがない。
「それで、一から鍛えなおそうと思って、冒険者の養成学校に通おう、と思ったんですが入学試験に落ちてしまって、試験官から『冒険者に向いてない』て言われて……。」
また厳しい言葉を言われたな。
「セイトは何で冒険者になったんだ?」
「それは……、家族を養うためです。故郷の村に両親や幼い弟や妹がいるので、毎月仕送りしているんです。家族は僕の仕送りを充てにしているので……。」
思っていたより切実みたいだな。
「とりあえず、『鑑定』してみようか? ひょっとしたらジョブの相性が悪いのかもしれない。」
俺はアイナを呼び出して鑑定してもらう事にした。
「この水晶玉に手を翳して意識を集中させなさい。」
「わ、わかりました。」
セイトは恐る恐る水晶玉に手を翳した。
「んっ!? こ、これって……。」
「どうした!? 何か分かったのか?」
「あの、やっぱり冒険者に向いてないんでしょうか?」
「ううん、そうじゃなくて……、この子とんでもない能力の持ち主よ。」
「どういう意味だ?」
「全ての能力値がMAXになってる……。」
『……はい?』
全員が固まった。
「えっと、どういう意味ですか?」
「全てのステータスが最大値になってる、ていう事。剣士としても魔導士としてもどんな職業についても成功する、と言う事よ。」
「えっ……、でも、パーティーの中では僕はモンスターによくやられたりするし……。」
「力が上手く使いきれてないのよ。それさえ勉強すればすぐに成長して、貴方を追い出した仲間や試験官を見返す事が出来るわよ。」
「ほ、本当ですかっ!?」
とんでもない奴が現れたな。
本人はまだ信じられない、ていう顔をしてるが。
ただ、才能があるんだったら伸ばさないといけないな。
何か楽しみが一つ出来た。




