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元勇者は静かに暮らしたい(Web版)  作者: こうじ
領主編
132/416

元勇者、新人冒険者の事情を知る

「セイト、何があったんだ? 事情を聞かせてくれないか?」


「えっと、僕は幼馴染と一緒にパーティーを組んでいたんですけど、段々と実力に差が出てきて、気が付いたら僕はパーティーの中で一番下で雑用係をやらされていたんです。それである日遂に追い出される事になったんです。『もうすぐSランクになる。お前は足手まといで邪魔だからいらない』て……。」


 ひどい話だが冒険者にはよくある話だ。


 俺も追放される現場にたまたま見かけた事があるが、空気の悪さといったらしょうがない。


「それで、一から鍛えなおそうと思って、冒険者の養成学校に通おう、と思ったんですが入学試験に落ちてしまって、試験官から『冒険者に向いてない』て言われて……。」


 また厳しい言葉を言われたな。


「セイトは何で冒険者になったんだ?」


「それは……、家族を養うためです。故郷の村に両親や幼い弟や妹がいるので、毎月仕送りしているんです。家族は僕の仕送りを充てにしているので……。」


 思っていたより切実みたいだな。


「とりあえず、『鑑定』してみようか? ひょっとしたらジョブの相性が悪いのかもしれない。」


 俺はアイナを呼び出して鑑定してもらう事にした。


「この水晶玉に手を翳して意識を集中させなさい。」


「わ、わかりました。」


 セイトは恐る恐る水晶玉に手を翳した。


「んっ!? こ、これって……。」


「どうした!? 何か分かったのか?」


「あの、やっぱり冒険者に向いてないんでしょうか?」


「ううん、そうじゃなくて……、この子とんでもない能力の持ち主よ。」


「どういう意味だ?」


「全ての能力値がMAXになってる……。」


『……はい?』


 全員が固まった。


「えっと、どういう意味ですか?」


「全てのステータスが最大値になってる、ていう事。剣士としても魔導士としてもどんな職業についても成功する、と言う事よ。」


「えっ……、でも、パーティーの中では僕はモンスターによくやられたりするし……。」


「力が上手く使いきれてないのよ。それさえ勉強すればすぐに成長して、貴方を追い出した仲間や試験官を見返す事が出来るわよ。」


「ほ、本当ですかっ!?」


 とんでもない奴が現れたな。


 本人はまだ信じられない、ていう顔をしてるが。


 ただ、才能があるんだったら伸ばさないといけないな。


 何か楽しみが一つ出来た。

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