元勇者、募集する
さて、晴れてギルド稼働となったのだが問題は山積みだ。
まず、冒険者が足りない。
依頼があっても冒険者がいなければ何にもならない。
俺やサラは冒険者として登録させてもらうがそれでも足りない。
「依頼と言っても、害獣駆除や薬草採りとかがメインになるだろうし、若い奴は一攫千金を求めるからな。」
「そんなもんなのか?」
「そうだよ。俺もかつてはそうだったから。冒険者になって間もないうちに勇者として旅立つ事になるんだけどな。」
「他のギルドから希望者を回してもらおうか?」
「でも、新参者のギルドに回してくれるだろうか?」
「そういう物好きな奴もいるだろう。」
そういう相談をしていた数日後、ギルドに若者がやって来た。
「すいません、登録したいんですが……。」
「おぉ、来てくれたか。うちは出来たてのギルドなんだ。書類さえ書いてくれればすぐに登録できる。」
「あの、学校に通ってなくても冒険者にはなれますよね?」
「? なれるけど?」
「あぁ、良かったぁ……。」
俺はチラッと書類を見た。
名前は『セイト・グランジェ』と書かれている。
見た目は気の弱そうな少年だった。
「ノエル、悪いけどコイツの指導係をしてくれないか?」
「わかった。よろしくな。」
「セイトと言います。よろしくお願いします。」
「ノエルだ。よろしく。戦闘経験はあるか?」
「一応剣の修業をしていました。」
「そっか、自分の武器は?」
「それが……、旅の途中で盗られてしまったんです。」
「盗られた、って盗賊にか?」
「いいえ……、前に入っていたパーティーに。」
……どうも訳ありみたいだな。




