幕間 カインのその後
レバニアの端に『ダンダ鉱山』という場所がある。
此処は重大犯罪を犯した者が行く、言ってみれば『刑務所』であり『牢獄』である。
此処での仕事はひたすら掘り続ける事。
朝から夜までひたすら掘り進む。
そして、鉱物を手押し車で運ぶ。
ただ、それだけ。
休憩は昼休みのみで、食事は支給されるが乾パンと水のみ。
そんな劣悪な環境の中にレバニア国『元』王子、カイン・レバニアはいた。
身なりはボロボロで体中は傷だらけ。
首には奴隷の首輪があり、腕には奴隷の紋章が書かれている。
はぁはぁ、とヨロヨロしながら手押し車で鉱物を運び出す彼にはかつての面影は無かった・・・・・・。
鉱山には月に1回だが面会日という物がある。
ある日、カインの元に面会したい人物がやって来た。
カインには誰が来たのかわからなかった。
そもそも今の自分に面会したい人物がいるのだろうか。
そんな事を思いながらカインは面会室に入った。
そこにいた人物にカインは驚いた。
「久しぶりだな、カイン元王子。」
「ノ、ノエル・・・・・・。」
そう、ノエルである。
「なんで・・・・・・、お前が・・・・・・。」
「警戒するなよ。ちょっと聞きたい事があるから来たんだ。」
「聞きたい事・・・・・・?」
「『魔導実験』というのに聞き覚えは無いか?」
「魔導実験・・・・・・、いや、聞き覚えは無い・・・・・・。」
「そうか・・・・・・。て言う事はやっぱり国王が独断でやった事なのか・・・・・・。」
ノエルは一人納得してウンウンと頷いた。
「その魔導実験がどうかしたのか・・・・・・?」
「うん、まぁお前の父親はやっぱり屑だった、という事だ。」
ノエルは魔導実験の事を話した。
話を聞くにつれカインは表情が青くなっていく。
「父上がそんな事をやっていたとは・・・・・・。知らなかったでは済まされないな・・・・・・。全ては私の責任だ。私が・・・・・・、勇者になりたい、なんて言わなかったら・・・・・・。」
「そんな事言ったのかよ。」
「私は・・・・・・、弟や妹達が優秀で結果を出しているのが怖かった・・・・・・。そんな私の唯一の味方が父上だった。しかし、今ならわかる。父上は間違っていた。そして、私も間違っていた・・・・・・。」
そう言って、カインはギュッと手を握った。
「ノエル、すまなかった・・・・・・。君の手柄を奪ってしまって・・・・・・。」
カインは頭を下げた。
「本当にそう思ってるんだな。じゃあこの話はこれで終わりだ。」
「・・・・・・それで良いのか?」
「あぁ、過ぎた事を言ってもしょうがないからな。それにお前はどうやら変わりつつあるみたいだからな。」
「私が・・・変わる?」
「素直に過ちを認めて謝罪する、それだけで大きな一歩だ。まずはこの鉱山で結果を出すんだ。結果を出せば必ず評価をする奴が現れる。それまで頑張れ。」
「ノエル・・・・・・。こんな私を励ましてくれるのか?」
「お前が反省しなくて、前と一緒だったらさっさと帰るつもりだった。だけど変わろうとしてるなら俺は応援するつもりだ。」
「ありがとう・・・・・・。」
カインは涙を流した。
此処に来て、温かい言葉をかけられたのは初めてだった。
しかも、自分が嵌めた人物からだ。
これが勇者たる由縁か・・・・・・。
カインはそう思った。




