元勇者、魔法協会会長に会う
魔法教会の中は独特だった。
本棚が天井の高さまであり職員らしき人物達が本を整理したり調べ物をしていた。
「独特な風景だなぁ……。」
「魔導士以外の方には変わってみえますよね。でも、これが私達のいつも風景なんですよ。」
ビーナは奥の方へと入っていき俺もその後を追う。
「此処が私の部屋です。」
そう言って奥にある部屋へと入って行く。
部屋に入ると意外と普通だった。
「改めましてレバニア魔法協会会長のビーナ・フレンシアと申します。」
「ノエル・ビーガーだ。しかし……。」
「あぁ、私が会長と言う事が可笑しいですか? まぁ、私も突然任命されてビックリしたんですけどね。まぁ、実は前任の会長は私のお爺ちゃんなんですよ。」
「じゃあ、その爺さんから任命されたのか。」
「そうなんです。前幹部そうとっかえでつい最近まで大変だったんですよ。あぁ、お茶でもどうぞ。」
「あぁ、ありがとう。」
出されたお茶を飲む。
「ハーブティーか。」
「疲労に効くお茶です。私、その人に体調に合わせたお茶とかお薬の調合が得意なんですよ。」
「そうなのか。そういえば、その総とっかえも前会長が指示したらしいな。」
「はい。今回の件でギルドやら協会やらが改革を断行しなければいけない状況に陥りまして。それでも、私の両親やアイナの両親は改革に反対していたんですよ。それでお爺ちゃんが強硬手段に出たんです。」
それが不正の告発だったのか。
「私のお爺ちゃんは『魔術、魔法は人の役に立つもの。自らの利益や他人の欲に囚われてはいかん。』といつも口癖の様に言ってましたから。」
随分と立派な人なんだな、前会長という人は。
「それで、アイナの事なんですが。」
「あぁ、そうだ。アイナとは同級生だ、て聞いたが。」
「はい、それだけじゃなくて小さい頃から知ってるんですよ。昔は、よく笑ってたんですけど、だんだんと性格が変わっていっちゃって……。学園に入学した頃になると私とも口を利かなくなったんです。」
そう言って少し寂しそうな顔をするビーナ。
「やっぱり家庭が原因か。」
「それだけじゃないんですよ。アイナの場合は『魔導実験』を受けてますから、それもあるかもしれません。」
「なんだ、魔導実験って?」
「要は強制的に強力な魔力を得る、人体実験みたいな物です。アイナは魔王討伐の旅に出る時に魔導実験を受けたんです。でも、それってリスクがあって体に大きな負担があるんです。」
そういえば、旅の時に苦しそうな表情をしていたけどそれが原因だったのか。
「でも、それって人道的にどうなんだ? 反対されなかったのか?」
「いいえ、積極的にやらせたみたいです。アイナの両親は。」
その話で漸く理解できた。アイナが家族とか無関心な理由が。




