元勇者、アイナの家庭の事情を知る
「えっ!?師匠にお会いしたんですか!?」
「あぁ、ジャレットの事も心配していたよ。」
ハノイ村に戻ってきた俺はジャレットにシエンスと会った事を話した。
勿論、ジャレットを追放したのは兄弟子でそこにシエンスの意志は無い、と言う事も。
シエンスはジャレットの事を心配している、と言う事を話した。
まぁ、大号泣だった。
「よがっだぁ……、わだし、ぎらわれでなぐっでぇ……。」
「ほら、ちゃんと涙拭きなさいよ」
アイナがハンカチをジャレットに渡した。
「うぅ……、ありがどうございまずぅ……。」
「だから、ここで結果を出すのを期待してる、って言ってたぞ。」
「はぁいぃ……、わたしぃ、がんばりますぅ。」
泣きながらも気合を入れて頑張ってくれるみたいだ。
「良いわよね、ちゃんと見てくれる人がいて。」
「アイナだって師匠はいるだろ?」
「……家庭教師の先生はいたけど、けなされるだけで褒めてくれた事なんて一度も無かったわ。」
そう言って、フッと寂しそうな表情をするアイナ。
「私は、落ちこぼれだったのよ。」
「えっ、でも魔法学院を首席で卒業した、て聞いたが。」
「親が校長とか理事長とかに賄賂を渡してたみたいなのよ。うちの両親は魔法協会のお偉いさんだから。その娘が落ちこぼれなんて他の魔導士に知られたくないでしょ。」
「そんなもんなのか?」
「そんなもんなのよ。だから、両親は魔王を倒した勇者の仲間、っていう『名誉』を手に入れるために私をパーティーに参加させたのよ。」
そういう事情があったのか。
そういえば、いつも必死だったのを覚えてる。
この村で初めて笑ったりするのを見たなぁ。
「そういえば、両親はどうなったんだ?」
「さぁ? 連絡取ってないからわからないわ。」
話だけ聞いてると、アイナの家はどうやらあまり良い関係ではないらしいな。
そう考えると俺の家は金は無かったけど幸せだったなぁ。たまに、親父が馬鹿な発言をしてお袋にぶん殴られていたけど。