元勇者、水源を確保する
翌日から俺は行動を開始した。
まずは水を確保しなければならない。
近くに川が流れていて、村の田畑に向かう水路が作られていたはずなんだが・・・・・・。
「なんじゃこりゃ・・・・・・。」
水路の入り口には水門が出来ていて塞がれていた。
「俺が旅立つ時はこんな物無かったはずだが。」
しかも水門を開ける為のハンドルが取り外されてある。
「廃村だと判断して、水源を絶ったんじゃないか?」
「いや、俺が旅立つ時は数人がまだ住んでいた。しかし、これじゃあ川からじゃ難しいな。仕方がない、別の場所を当たろう。」
「何か手立てはあるのか?」
「確か村はずれに井戸があったはずだ。」
村の集落からちょっと離れた場所に井戸がある。
昔は、此所から飲み水を汲んだりしていた物だ。
「此処も蓋がされてやがる・・・・・・。」
しっかりと木の蓋がされていた。
しかも何やら札が貼ってある。
「この札は『土地神封印の札』だ。」
「土地神? あの伝説の?」
国の守り神である土地神。
土地神に守られし国は未来永久の繁栄を約束されている、と言われている。
「この札は多分、魔族が貼った物だ。土地神の力を封印し、国を弱体化させる為に。」
「なるほど・・・・・・。」
ん、それだったら・・・・・・。
「じゃあ、蓋をとっても問題は無いよな?」
国が貼ったのなら色々問題はあるが魔族が貼ったならそれを解除するのは勇者の仕事だ。
聖剣は無いから、自宅から釘抜きを持ってきて遠慮なく木の蓋を取っていく。
勿論、札も破り捨てた。
「よしっ!全部取り外したぞっ!」
蓋を取り外して、井戸の中を覗く。
暗くて見えないが水の音が聞こえる。
水があるのは確かだ。
「ノエル、だんだんと水の音が大きくなってないか?」
言われてみれば何か上昇してきそうな気が・・・・・・。
「って、離れろっ!!」
俺とサラが井戸から距離を置いた直後、井戸から巨大な水しぶきが上がった。
そして、
「私、ふっかーっつ!!」
井戸の上でポーズを決めている少女がいた。