元勇者、錬金術師に会う
「ジャレットは私が自らスカウトしたんです。あの子は錬金術の才能がある子ですから。」
「でも、追い出したんだろ?」
「それは違います。私には他にも弟子がいるんですが、その他の弟子達が彼女に嫌がらせをしていたんですよ。」
「嫌がらせ?」
「わざと粗悪な材料を渡して失敗させたり、調合のやり方を教えなかったり、としていたそうです。私の監督不行き届きと言われればそれまでですが……。」
本当にすまなそうな顔をしているシエンス。
「でも、彼女はどうやら良い環境をもらったみたいで安心しました。」
「確かに、彼女の作るポーションは上級だからな。腕は良いんだろう、とは思っていた。」
「で、その嫌がらせをしていた弟子達はどうしたんだ?」
「勿論、処分はさせてもらいました。彼等には錬金術師より人としての再教育が必要みたいですから。」
その話を聞いてサラはようやく表情を和らげた。
シエンスの話を聞いていた時、不機嫌な顔をずっとしていた。
多分、同じ裏切られた境遇だからジャレットに同情したんだろうな、と思う。
でも、こうしてちゃんと見てくれる人がいる訳だからよかったよ。
「では、ギルドの話をしましょうか。」
そういえばそうだった。
「このギルドは見ての通り総合ギルドとなっています。冒険者もそうですし、魔術師、錬金術師、商人全てが入っている訳ですが何故かわかりますか?」
「効率が良いから、とか?」
「それもそうですが、一番の利点はギルド同士の協力関係が保たれるからなんです。このギルドができる前は大変だったんですよ。」
それはなんとなくわかるような気がする。
ギルドの中には悪意を持ってライバルのギルドを潰そうとするのもある。
俺も冒険者時代にライバルギルドから嫌がらせを受けた事が何回もある。
それはガーザスも経験している。
結局そのライバルギルドは嫌がらせの結果、死人を出してしまい解散に追い込まれた。
自業自得の結果なんだけど、冒険者達は暫く白い眼で見られたのを覚えている。
「情報を統括する事で無用なトラブルや事故を防げる、それがこのギルドの利点なんです。」
「それをその若さで考えたのか? すごいな。」
「あぁ~、私は若い様に見えます?」
「どっからどう見たって20代に見えるけど?」
「実は、こう見えても先代の勇者パーティーのメンバーなんですよ。」
その瞬間、この場の空気が固まった。