元勇者、計画を実行する
「‥‥‥。」
「‥‥‥。」
今、凄い緊張感が場の空気を覆っている。
現在の状況、正座している悪徳商人、その前には仁王立ちして腕を組んでいるアイナ。
後ろにはゴゴゴゴ‥‥‥、という音が聞こえてきそうだ。
「アイナがあれだけ怒っているなんて珍しいな。」
「俺も旅をしている時も、あんなに感情を見せる事は無かったな。」
クールでプライドが高いアイナは、相当騙された事が許せなかったんだろう。
「‥‥‥さて、何か申し開きはあるかしら?」
「いや、その‥‥‥、申し訳ございません。まさか、勇者パーティーの方とは思わなくて‥‥‥。」
「貴方は人を見た目で判断するのかしら? 真の商売人だったら見た目で無い所で判断するんじゃないかしら?」
「返す言葉もございません‥‥‥。しかし、言い訳をさせてもらいますと、全てはセラウィン伯爵の指示でして‥‥‥、『冒険者なんてどうせ安物と高価な物の違いとかわからないだろう』と‥‥‥。」
「それは俺達さえも馬鹿にしてる、って事だよな。」
「ひぃっ!? わ、私はそんな事は1回も思った事はございませんっ!」
俺も馬鹿にされた様な気がして何かムカついた。
「俺達に協力してもらえれば、少しは罪が軽くなるはずだ。協力するよな?」
「も、勿論です! 私は何をすればいいんでしょうか?」
「簡単な話だ。この種をセラウィン伯爵に売ってほしい。」
俺はアリスから貰った寄生花の種を渡した。
「この種は魔界に咲いている花の種だ。これからは魔族を相手にする事があるだろうし、まぁ適当にセラウィン伯爵に売り付けてほしい。」
「わ、わかりました。」
その後、商人はセラウィン伯爵に種を無事に売り付けたらしい。
さて、どうなるのか‥‥‥。




