元勇者、情報を集める
メラウィン領から帰って翌日、シュバルツがやって来た。
「アンジェから話は聞きました。領地内のトラブルは本来なら騎士団が出なければいけないんですが‥‥‥。」
「頼まれたら嫌とは言えない質なんでな、それにセラウィンを今のうちに叩いておかないといずれ国を揺るがす様な事になる。」
早めに完膚無きまで叩き潰して置いた方が良いだろう。
「とりあえず、現在の領地の状況がこちらです。」
テーブルの上に地図を広げた。
「今現在、領地を持っているのは大小合わせて数百人はいます。この一番広いのが我が王族が直接治めている領です。」
「そんで、メラウィンの領地がこれでセラウィンの領地がこれか。確かに広いな。」
「セラウィン伯爵は良くない噂を聞きます。強引な力で跡取りがいない領地を我が物にしたり、高い税率で領民から金を巻き上げたり領民が領土から出すのを禁じたり‥‥‥。」
「そこまでわかってるなら何で今まで放置していたんだ?」
「魔王がいたからですよ。全世界が魔王討伐に傾いていましたからね。漸く我が国に目を傾け始めた矢先のこの話ですよ。」
なるほど、大きな悪に隠れて好き勝手やっていたのか。
「財界とも繋がりもある、と聞いたがセラウィン領は裕福なのか?」
「彼処は名門ですからね。実は我が王族にもセラウィンの関係者と繋がりがある人物もいるみたいです。」
「もしかして最終的にはこの国を乗っ取るつもりなんじゃないか?」
「否定出来ないのが怖いですよ‥‥‥。」
マジでなんとかしなきゃいけないな。
腕を組んで俺は考えた、が良いアイディアが浮かばない。
こういう時に悪知恵を働く奴がいたらなぁ‥‥‥。
「ノエル、いる?」
「ん? アイナか‥‥‥、あぁっ!!」
アイナの顔を見た瞬間、俺はある事を思い出した。
「ど、どうしたのよ、急に大声を出して‥‥‥。」
「アイナ、お前の知恵を貸してくれないかっ!?」
「わ、私の? 何の話?」
「ノエル殿、何故アイナ様なんですか?」
「アイナはパーティーの参謀役だったんだ。」
作戦を練る時にアイナ主導で会議をしていて、それが上手くいった事が何回もある。
アイナに事情を話した。
「パーティー組んでた時もそうだったけど‥‥‥、こういうのに巻き込まれる所は変わらないわね。」
「しょうがないだろ。」
呆れた様に言うアイナ。
そこは否定できないな。
「協力はするわよ。」
アイナにも協力してもらう事にした。