元勇者、メドウィン領に行く
翌日、早速メドウィン領にやって来た。
「来ていただいてありがとうございます。何もありませんが、どうぞ。」
屋敷内をメランが案内してくれる。
「屋敷の広さにしては使用人とかはいないんだな。」
「給金が払えなくなってしまって‥‥‥。みんなにはお暇を出しています。」
よくみたら壁とかは汚れがあるし、蜘蛛の巣もある。
中庭も雑草が生えていて手入れもされていない。
「穴が空いているので気をつけて下さい。」
「修理も出来ないのか。」
「えぇ、お金も人もいないので‥‥‥。」
メランは申し訳なく言う。
「こちらがお父様の部屋です。お父様、ノエル様が来られました。」
メランがコンコンとドアをノックすると弱弱しい声が聞こえた。
「そうか、入ってもらいなさい。」
部屋に入るとベッドに寝ている白髪混じりの男性がいた。
頬は痩けて、げっそりとしている。
「よくぞ来て下さいました。私『ビラン・メドウィン』と申します。」
「ノエル・ビーガーです。事情はメラン嬢からお聞きしました。」
「えぇ、私もまさかこんな事になるとは思っていませんでした‥‥‥。人を見る目には自信があったのですが‥‥‥。」
相当ショックが大きかったらしい。
「援助の話も出ている、と聞きましたが‥‥‥。」
「あぁ、隣の『セラウィン』伯爵だが、あの男は昔から強欲で領民の事など考えずに自分勝手な行動をしている男だ。息子もそうだ。」
「そんな奴がなんで領主なんてやってるんだ? 人として問題ありなんじゃないですか?」
「財界と繋がりがあるみたいでお金の力を使って口止めをしてるみたいです。」
「なるほどな‥‥‥。」
ソイツらは潰しておいた方が良いな。うちにも被害が来るかもしれない。
と、ガチャと扉が開いた。
「メラン様、いらっしゃいますか? って、あら? ノエル様。」
「アンジェ様?」
入って来たのはアンジェだった。