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元勇者は静かに暮らしたい(Web版)  作者: こうじ
領主編
105/416

元勇者、社交界デビューする

 シュヴィア城 大ホール


 女性はきらびやかなドレスに身を包み、男性はタキシードを着てエスコートをしている。


 オーケストラが奏でる華やかな演奏を後ろにダンスを踊るカップル達。


「‥‥‥なんで、こんなとこにいるんだろ?」


 そんな空気をよそに俺は溜め息を吐きながらもテーブルに置いてある料理を食べていた。


「しょうがないだろ、領主として他の領主達とコミュニケーションをとらなきゃいけないんだから。」


「だからと言ってなんでこんな豪華なパーティーをするんだよ。これこそ貴族の見栄みたいなもんだろ。」


「俺だって苦手なんだよ。酒場で騒ぎながら飯を食っていた方が性にあってる。」


「だったら後で飲み直しするか。」


「だな。」


 俺とガーザスは隅で小声で愚痴を言いあっていた。


 何故、俺達がこんな場違いな所にいるのか?


 実は前から社交パーティーに参加してほしい、とシュバルツから言われていた。


 俺は貴族ではないし、そんな華やかな場所は苦手だからやんわりと断っていた。


 正直、めんどくさい。


 だが、土下座されるまで御願いされたら流石に断れない。


 一回だけ、という条件で参加する事になった。


 ガーザスには付き添いとしてついてきてもらった。


 元は貴族な訳だし、俺よりも経験はあるだろうと思っていたが甘かった。


 警備はした事あるが、パーティー自体はそんなに参加した事が無い、と断言された。


 そんな訳で俺達は目立たない様にコソコソと食事をしている訳だ。


 そんな俺達の前にシュバルツが婚約者らしき女性とやって来た。


「楽しんでは‥‥‥いないみたいですね。」


 苦笑いしながらシュバルツは言う。


「まぁ、なれてないからな。料理は美味いのが救いだよ。」


「それだけでも満足してくれたら良かったですよ。あぁ、紹介します。婚約者のアンジェです。」


 赤髪を綺麗に纏めてドレスを着ている女性が挨拶をした。


「はじめまして、『アンジェ・ミランドール』と申します。いつもシュバルツ様がお世話になっております。」


 この少女が例の婚約者か。確かに騎士としての凛々しさがみえるな。


 後、体のラインが引き締まっていてやはり戦っているのがわかる。


「はじめまして、ノエル・ビーガーと申します。此方こそシュバルツ様には色々お世話になっております。」


「付き添いのガーザス・エドハルトです。」


「お噂はシュバルツ様から聞いておりますわ。今後ともよろしくお願いいたします。」


「此方こそよろしくお願いします。」


 なかなか感じの良い少女じゃないか。だが貴族だからな、本音と建前を使い分けているかもしれない。


 勇者時代に他の国に行った時に城に行き国王や王族に会うんだが、口では労いの言葉をかけているんだが目は見下しているんだよな。


 そんなのを見てるから正直、貴族とかは信用してない。シュバルツ達は別だけどな。



「はぁ、疲れた‥‥‥。」


 長かったパーティーが終わり、漸く解放され俺とガーザスは酒場にやって来た。


 因みに私服に着替えている。タキシードはシュバルツが用意してくれた。


「やっぱり、こっちの方が居心地が良いよなぁ、表情が固まるかと思ったよ。」


「だよなぁ、やっぱり住む世界が違うよ、俺達とは。」


「だな、でもトラブルが起きなくて良かった。」


「トラブルとかあるのか?」


「ある意味、戦場と一緒だからな。掴み合いのケンカになる事なんてあるぞ。」


「ドロドロしてるんだな。」


「貴族の世界が一番ドロドロしてるよ。俺は幼い頃から見ていたから嫌で冒険者になったんだ。」


 そうだったのか、それは初耳だ。


 俺達がそんな話をしている時にいきなり声をかけられた。


「あの‥‥‥、ノエル・ビーガー様でしょうか?」


「え? そうだけど。」


「私、隣の領を治めているメドウィン伯爵の娘の『メラン・メドウィン』と申します。先程は余り話せなかったので‥‥‥、失礼ですが後をつけさせてもらいました。」


 この伯爵令嬢との出会いが後日、メドウィン領に関する騒動に俺が巻き込まれる事になる。

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