幕間 邪神メナルティ
ミラージュがハノイ村に来る数時間前、
聖国内にあるミラージュが住む神殿のある一室の前にミラージュがいた。
「メナー、入るわよ。」
ミラージュが部屋の扉を開けると、部屋の中は薄暗くモゾモゾと何かが動いている気配は感じる。
ミラージュははぁ、と溜め息をつき照明をつける。
「うぅ、眩しい‥‥‥。」
布団にくるまり怠そうな顔をしながらミラージュを見ているのはこの部屋の主、邪神メナルティ。
「今日は月1の掃除の日よ。さっさと起きなさい。」
「あの悪夢の日か‥‥‥。」
メナルティはゆっくりと起きてボーッとしながら歩く。
これが世界を崩壊に導く邪神の姿である、とは多分誰も信じられないだろう。
普段の彼女は部屋に引きこもり様々な本を読み漁っている。
それが何の為になるかはわからないが、基本的には世界に影響を与えてはいないのでミラージュは静観をしている。
ただ、部屋の掃除は流石にしなければいけないので月に1回は大々的にしている。
「さて、外に行くわよ。」
「外? なんで?」
「決まってるじゃない。お風呂に入る為よ。」
その言葉を聞いた瞬間、メナルティは逃げようとしたがすぐにミラージュに捕まった。
これも日常の光景である。
「は、離せぇ、離してくれぇ‥‥‥。」
「1ヶ月前でしょ、お風呂に入ったの。今日は温泉に行くわよ。」
「温泉なんて入ったら消滅するぅ‥‥‥。」
「温泉に入って消滅する邪神なんて聞いた事無いわよ。」
メナルティの抵抗なんぞ何処吹く風か、ミラージュはズルズルとメナルティを引きずりながら転移魔方陣に向かう。
周囲の人々も見慣れた光景だからだろうか、気にはしていない様子だった。




