元勇者の村に魔王がやって来た
シュヴィア城での面談から数日後、アリスが村にやって来た。
魔族と人間がどの様に生活しているのかを視察にやって来たのだ。
「自然に囲まれて素晴らしい環境じゃないか!」
アリスは城の時とは違いカジュアルな服装をしていた。
「今日は動きやすい格好をしてるんだな。」
「普段はこの格好なんだ。あの服は公式の時しか着ない。それに、必ずコケるからあんまり着たくないんだ。」
「なるほど。て言うか、城は留守で良いのか?」
「城は無いぞ? 今は別宅で生活している。」
‥‥‥うん、そうだったな。俺が魔王を倒したと同時に城は崩壊したんだよな。
「何か‥‥‥、すまん。」
「謝らなくても良いんだぞ? 逆に感謝しているんだ。あの城は広すぎて何度か迷子になって、泣きながらさ迷っていた事があるんだ。壊してもらってスッキリしているぐらいだ。」
前魔王とアリス、色々合わないんだな。
俺はアリスに村の中を案内した。
ほとんどがまだ建築中なのだが、それでも俺の説明をフンフンと頷きながら聞いていた。
そして、孤児院にやって来た。
「あの子達が魔族の子供、カイヤとミサだ。」
「そうか、他にも獣人やエルフもいるな。」
アリスは優しそうな目で子供達を見ていた。
「やはり、差別意識を無くすためには幼い頃からの環境や教育が必要だな。」
「そうだな、まぁ聖王の努力の賜物だな。」
「聖王か。私は聖国に立ち入る事は出来ないが、一度会ってみたいものだな。」
と
「呼んだ?」
『ひゃあっ!?』
いきなり後ろからヒョコッと顔を出したミラージュに二人で驚きの声をあげた。
アリスに至っては驚きの余り尻餅をついたぐらいだ。
「急に出てくるなよっ!? て言うか、いつ来たんだ!?」
「ついさっきよ。新たな魔王が来てるって聞いたから。それに。」
「ミラ~、お風呂なんて良いよぉ~。」
「駄目よ、引きこもってばっかりで風呂に入らなくて1ヶ月が過ぎてるんだから。」
後ろに縄で縛られている髪の毛ボサボサの女の子がいた。
「ミラージュ、誰だ?」
「邪神『メナルティ』、前に言ったでしょ。引きこもりグータラヤル気なしの。」
その瞬間、空気が固まった。