裏28話下
そうして私の館へと向かっていたら前の方から
「門から逃げたらしいぞ」
と言う声が聞こえる。
(どうやら無事に逃げることが出来たようで良かった)
「おい、ドナルド!何処に逃がしたんだ!」
テディ執政官が怒鳴ってくる。
「私は逃がしておりませんが。そもそも人が一挙に押し寄せてきたら誰だって逃げるでしょう?」
敬称抜きの事には一切触れずに話す。
「いいや、お前が逃がしたに違いない。これだから亜人は」
そうすると人間達の中からも『そうだ』という声があがる。が、それと同時に回りにいた非人間の種族の人達が集まって『なんだと』という声も上がり始める。
「そういう差別は辞めていただきたいものですね」
「何生意気な事を言ってるんだ。亜人は亜人だろう。神の子孫である人間とは対等である筈が無い」
『そうだ。亜人は人間様の奴隷になるのがお似合いだ』
人間側からこの様な声があがった。そうすると黙っているわけもなく怒号がとびかう。
「待たんか。先の発言については聞かなかった事には出来ないが今やっても仕方ないだろう。ところでテディ執政官、あなたは今日あらかじめ『すぐに門が閉じれる様に』と命令していたそうですね。実は今日この様になる様計画していたのでは無いですか?だから王国側から交渉にやってくる筈だった人間も来なかったのでは?」
「なんの確証があって言っているのかね」
このタイミングかな。
「まぁその話は今度にして今は解散しましょうか」
「まぁいいだろう」
そうして渋々皆が帰って行く中1人駆け寄ってくる。
「監視の者をつけますか?」
「ああそうしてくれ。今回の件を踏まえると何をしてくるか分からないからな」
「かしこまりました」
そう言って人々の中へと消えて言った。
「さて帰るか」
人がいなくなった門を抜け館の中へと入る。
この時起こされた事件の重要性をキチンと理解できていた人はまだいなかった。
相手が厳しく言ってこなかったのはこの件が仕掛けられたという事を大勢の前で追及されない様にするためです。




