裏28話 上編
今回は28の裏話(というよりもドナルド執政官視点)です。
アドルフ達がドナルド執政官の館で話していた頃、ミナントの中心ではテーブルやイスが並べられ、色んな所に出店がある中感謝祭の開会式が行われていた。
「・・・今回も無事に感謝祭を行えることを嬉しく思います。まぁこんなつまらん話はこれで終わりにしてみんなで楽しく呑みましょう。以上!」
『おぉ〜!!!』
「ドナルド執政官ありがとうございました。続きまして有志による出し物です。まず始めは・・・」
(俺の仕事はこれで終わりかな。後はあいさつ回りついでに色んな所をハシゴしながら呑むか)
「ドナルド執政官」
あんまり聞きたくない声に話しかけられた。
「これはテディ執政官"殿"。何でしょうか?」
「《何でしょうか?》ではない。何だ先ほどの挨拶は!少しは執政官としての仕事に自覚を持ちたまえ。まぁ別に民衆の声から仕方なく君を置いているわけだから辞めてもらっても我々としては困らないのだがな」
(ケルツァニア王国から派遣されてきた人間優遇派の役人だから下手に口を聞くと面倒になるからなぁ)
「あぁ、そうだ。エルフ共はどうした?」
「エリングの里からきた方達は私の館にてお休みいただいております」
「そうか。くれぐれもこの街の予算を余計に使わぬようにしておけよ」
そういうと話は終わりだと言わんばかりにさっさと去って行った。
「執政官様」
小さな声でそっと話しかけてくるものがいる。それは私が個人的に立ち上げた諜報機関のものだった。メンバーは兵士から農民、酒場の店主などと様々である。
「どうした?」
「酒場の店主からの情報ですが、《今日速やかに城門が閉じれるように》という命令が出ているようです。裏もとれました」
と報告する。
「そうか何故だかわかるか?」
「申し訳無いのですがそこまでは」
「そうかありがとう。引き続き情報が入ったら頼む」
「かしこまりました」
そう言って人の中へと消えていく。
(一体何をしようとしているのか)
「考えても埒が明かないからとりあえずは呑むか」
そうしてそこそこの量を呑み先ほどの話などころっと忘れた頃事件は起きた。先程まで晴れていた空が急に暗くなり皆が空を見上げる。
「何だあれ?」
何処かから疑問の声があがる。
「太陽が...消える?」
このことは彼らに大きな衝撃を与えた。まるで最後を惜しむようにゆっくりと消えていく。そうなるとパニックになるのは自然であろう。
「終わりだ。世界を神様がお見捨てになられてしまわれた」
ある者は逃げ惑い、またある者は絶望により立ち尽くしたりした。
「みんな落ち着いてくれ。とりあえずは落ち着くんだ」
そう声をかけても収拾がつかない。
「これはきっとエルフのせいだ。エルフが来たせいで神がお怒りになられたのだ」
どこかからかそういう声が聞こえる。するとそれに賛同するように『そうだ。きっとそうに違いない』という声があがる。
「エルフを討ち、神に許しを請おう」
「そうだ」
何人かの人間が呼応する。すると次第に『エルフ討つべし』の声が大きくなっていく。
「マズイな。誰か館にやらないと」
「その役目私にお任せください」
「任せて良いか?」
たまたま近くにいた厩番の若者に任せる。
「まぁ待て。それは尚早では無いか?」
「なんだドナルド執政官。私の意見のどこがおかしいと言うのかね?」
「まだエルフと決まったわけでは無いでしょう」
「何を言っているのかね。これは明らかに神がエルフに対して行ったものだろう」
「それが尚早だと言っているのだ。考えてもみたまえ、神様がエルフを罰する為に行ったなら前回訪ねて来たの時に起こっているだろう。そうで無いにしてもなぜ感謝祭の日に起こすのかね。神様に感謝する日にだ」
「そ、それは...わからないが原因はエルフで間違いないはずだ。もしかしてお前も協力者だと言うのか!?」
「だが太陽は少しづつだが戻って来ているぞ」
「だが行動を起こさねばならない。行くぞ!」
すると人間の多くがエルフがいるはずの私の館へと向かっていく。
「はぁメンドくさいことになったな、これは」
そうして私も後をついていく。
来週の分で考えてるので多分28日は更新できません(>_<)
後、今回話の中であった無理矢理なこじつけは日食が終わる前に行動を起こしたかった人達の焦りと考えてください