第13話
今回少し長め
翌朝部屋に吹き込む風で目覚めた俺は顔を洗うため部屋を出て井戸へと向かう。
「少し暖かくなって来たかな?」
今までの風は突き刺さるように冷たかったが、ほんの少しだけ春の柔らかく暖かい感じがする。
「さて今日も頑張りますか」
家に帰るとさりげなくカチューシャが居て、お茶を淹れていた。
「ゴメンな、カチューシャ」
「良いわよこれ位。こんな事しか出来ないから」
(そういう事では無いんだがな)
「その事はまぁいい、お前に渡しておきたい物があるんだ」
「え、何?」
カチューシャが頬に紅を差す。
「これなんだが」
ミナントで貰った物に俺が一手間加えた物が入った箱を渡す。
「開けていい?」
「もちろん」
そう俺が言うと彼女は箱をそっと開けた。そこには銀で作られたクローバーのネックレスが入っていた。ちなみに俺がした一手間とは、
「後ろに名前が彫られてるじゃない」
そう言う事だ。
「後、頑張ってそのネックレスに"幸せになるよう"魔法を込めたんだ」
「あんたが?」
「そう俺が」
「そんな事出来たの?」
「お前の為に調べた。効果は強く無いんだけどね」
「ふん、くれると言うなら貰ってあげなくも無いわ」
偉そうに彼女が言ったかと思うとはっとした顔をして、急にしゃがみ込んでしまった。
「だ、大丈夫か?」
何事かと思い近づくと、彼女は聞き取れない声量で何か言っていた。
「おい!」
「はっ。な、何でも無いわ。それよりもあんたがくれたんだからあんたが私につけなさい」
そう言って開けた箱を突き出す。また、赤かった顔をますます赤くした。
「やっぱ、何でも無い」
消えそうな声で言って突き出していた箱を戻そうとするが、それより先に俺が箱を掴んだ。
「良いよ。つけてやる」
そう言って箱からネックレスを取り出し、留め具を外しながらカチューシャの後ろに回る。そっと頭の上から手を回しネックレスを彼女の首にかけ留め具をとめる。
「はぅ」
そんな声が彼女からもれる。髪に触れそっと持ち上げてネックレスより上にする。
「ほら、出来たぞ」
「」
沈黙が流れる。
「ありがとう」
沈黙を破ったのは彼女のそんな言葉だった。
「気にするな。本当に前はすまんな」
「それは分かったから。そんな事よりレベル上げしなくて良いの?」
「そうだなレベル上げもしたいがその他にやらなきゃいけない事があるからそっちが先だな」
「やらなきゃいけない事?」
「そう。まぁ今日は家でゆっくり考え事をする事だな」
ノンビリとお茶を飲みながら執務室で考えを整理する。
(さぁここまでどうにかやってこれたが問題はこれからだ。これからケルツァニア王国を交えたミナントとの国境画定が始まる。ここで少しでも良い条件を引き出したいがどうしたら良いのだろうか。う〜ん)
ドアが開けてカチューシャが入ってくる。
「どうした?」
「ハインツさんがアドルフに話したい事があるって」
「そうか、ここまで案内してくれ。そういえば、『里を護るために働きたい』っていう奴はどれ位集まった?」
「それは大体20人位ね」
「後でその人たちの名簿くれるか?」
「分かったわ。とりあえず案内しちゃうわね」
「頼んだ」
(ある程度の人数は集まったか。だが、戦闘になったとして勝てるのだろうか)
コンコンコン
「ハインツさんを連れてきたわよ」
「開けて良いぞ」
「どうもミンスター様」
「よくきてくださいましたハインツさん」
「早速なのですがお伝えしたい事がありまして」
「人払いすべきですか?」
「いえそのままで構いません。で、伝えたい事なのですが最近森で獣や魔物の活動が活発になっていると感じたので報告に来ました」
「本当ですか。ハインツさんの勘ではどれ位で里の近くまでやって来そうですか?」
「大体1カ月程かと」
「そうですか。そんなにありませんね。では銃の試験がてらやりますか。カチューシャ悪いんだがさっき言っていた名簿今持って来れるか?」
「分かった」
カチューシャが部屋を出ていく。
「名簿ですか?」
「ええ、自衛団志願者達の名簿です。あくまで出来ればなのですが半月をメドに狩人に仕立てあげて頂けませんか?武器は3日程あれば25丁出来ますので」
「半月ですか...やるだけの事はやってみましょう」
「アドルフ持って来たわよ」
カチューシャが部屋に戻って来た。
「2部用意してあるか?」
「もちろん」
「じゃあ1冊ハインツさんに渡してくれ。ではハインツさん頼みました」
「ええお任せを」
そう言ってハインツさんは部屋を出ていった。
「カチューシャ、人前でその呼び方をやめろ」
「ゴメンうっかり」
どうやら反省する気がないらしい。
書き溜め無しなのでご要望を下さいましたら反映する(かも?)




