《9》
できちゃった……。
気紛れ投稿、そいやー。
いつも投稿ペースが遅くて申し訳ないです。
読んでいただいて、楽しんでいただけたら幸いです。
ではではー。
《9》
辺りへ疎らに樹が生えている林(……森?)を歩く。
あともう少しで街の北門へ着きますね。時間にすればおよそ30分程といったところでしょうか?
「そういえば、ディーンさん聞きたい事があるんですけど、良いですか?」
「ん? 何だ、何が聞きたい? 答えられる範囲でならば貴様の質問に答えてやらんこともない」
おおー。快諾です。
「ディーンさんはどうしてあんなに森の奥深くにいたんですか?」
「ん? なぜそれが気になるのだ?」
「ディーンさん結構HP減ってたじゃないですか。一人じゃキツイんじゃないかな、って思いまして。そこまでして達成したい目的がなんなのか気になったんです」
「…………」
あら? もしかして、聞いてはいけない事でしたでしょうか? ……いえ、これはどう答えるべきか悩んでいるといった感じですね。
「………ふむ、貴様には別に話しても構わんだろう。彼処には素材を採取しに行っていたのだ。」
「素材……ですか?」
「そうだ。……また間抜け面を晒しよってからに。もう少し周りに気を配ったらどうなのだ?」
「えー、大丈夫ですよぉ。今はディーンさん以外には誰もいませんし」
「……よくもぬけぬけと。まぁ、段々と貴様も口調が崩れてきたのだ、良しとしよう…」
あら? 私、口調、崩れてましたか。…自分では気付かないものですね。
っと、話を戻しましょう。
「ディーンさん、素材というのは新しい武器や防具を作って貰うための素材ですか?」
「そうだ」
「さっきの鹿の角を槍に加工して貰うんですか?」
「そう…………、ああ、違う違う。
加工して貰うのでは無い。この我自身が装備の作成をするための素材だ。決して、其処らの有象無象共に寄越してやる訳では断じて無い。」
ほほぅ。ディーンさんが作成を……。
「えっ!?」
「なんだ、煩いぞ、間抜け」
「あれ!? 間抜けって酷くないですか!? なんか私、凄い自然に貶されてる!?」
「それが煩いと言っているのだ、間抜け」
「うっ……」
会ったばかりの、ディーンさんにさえも馬鹿にされたぁ……。最近は若菜ちゃんや一真さんもアレだし、私ポンコツになってきてるのかなぁ? 前よりはマシになったと思ったんだけど…。
……。
……。
……。
「…………………。言い過ぎた、すまない」
「あ、いえ、気にしないでください。確かに声が大きかったと思いますし…」
……。
……。
……。
ち…、沈黙が重いpart2です……。
と、兎に角、話を戻してしまいましょう。
「どうして戦闘職であるディーンさんが素材集めを?」
「あ、ああ……我は戦闘職では無い。生産職だ」
……え? あんなに戦えてたのにですか?
「でも、ディーンさんあんなに戦い上手だったじやないですか」
「…ふん。生産職でも、戦えた方が良いのは当たり前ではないか?」
なんだか、物凄い理不尽を目の前にしてる気分になってきました。戦闘もできて生産もできるなんて…。いや、まぁ、そういう人がいなあという訳では無いと思いますが。斯く言う私も、戦える生産職を目指している訳ですし。
「それに我は一応戦えるというだけであって、敵との戦闘を得意としている訳では無い。」
「あら? そうなんですか? ディーンさんの槍捌きは中々のものだと思ったのですが…」
「……ふん。そうだ。
いくら槍の扱いに長けていようと、この世界の中にいる限り、モンスターを相手とした戦闘において、生産職が戦闘職に敵う事は難しいだろう」
「……あっ! 成る程。スキルの存在ですね?」
「そうだ。貴様も、漸く頭が回るようになったではないか? アイリ」
そういうことですか。この世界では、対応するスキルを持ってさえいれば素人であってもそれなりに戦う事はできます。その反面、如何に現実において優れた技能を誇っていたとしても、この世界でそれを存分に発揮するのは難しいんですね。
ただ、逆を言えば、システムの関与しないリアルスキルにおいてはその効力を存分過ぎる程十全に発揮する、と。それが、先程のディーンさんの槍捌きなんかにあたる訳ですね。
「だから我は、あの時貴様が助けにこなければそのまま死に戻っていたやもしれぬ訳だ…。
良くぞこの我を助けた、誉めて使わそう」
ふふふふふ…っ! また、ディーンさんに感謝されてしまいましたね。
少しずつではありますが、順調にディーンさんがデレてきつつあります。この調子です。
林を抜けて街道へと出ました。ここから先は、狭いながらも草原エリア。森林エリアとは湧出するモンスターも種類が異なるために少し注意が必要ですね。
とはいえ、隣には頼もしいディーンさんがいることですし、街までの距離もそう遠くはありません。何かトラブルが起こることもないでしょう。
「それで、ディーンさんはどんな生産職なんですか? 因みに私は、鉱石を集めていた事から解るかもしれませんが鍛冶師を目指してるんですよ」
「……ほぅ、【鍛冶】師、とな? それなら、もし貴様の腕が良ければその内我の槍を頼むこともあるかもしれないな…」
「本当ですか? その時は私、頑張りますね!」
嬉しいことに、今から期待をされています。これは益々頑張る必要がありますね!
「因みに、我の所持している生産スキルは【裁縫】と【毛皮】の2つだ。鹿を相手に戦っていたのも、鹿のドロップである毛皮を欲していたがため、というわけだな」
ほぅほぅ…。
「【裁縫】ということは、布防具も作れるんですよね?」
「……勿論、そうだが…?」
「わぁ! それじゃあ、今度私に防具を作ってくれませんか?」
「……ほぉ? 貴様如きが、この我に物を願うというのか……」
……もしかして、ダメだったのでしょうか…?
「あと……、えっと…、」
「……ふははっ、ほんの戯れだ。
今度、諸々と貴様の周辺状況が落ち着いて来たのならば、我に連絡を寄越すが良い。今はまだ金や持っているアイテムも少なかろう。
それまでには、我もスキルのレベルを上げるなりして、より良いものを作れるように励むとしようではないか」
「……ふふっ。ありがとうございますね」
他愛もない話は、私たちが街の中へと無事入るまで続きました。
たまには一人で行動するのも、新しい出会いがあって良いものですね!
こうして、私の前半一人後半二人の採掘ツアーは無事、終わりを迎えたのでした。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます…!