第6話 女の子を賭けたケンカ
今までで一番長いものとなりました。それでもほかの作品と同じくらいですが……。
ご意見、ご感想もよろしくお願いします
「あ゛?」
不良Aがイライラした口調で返す。
「だから、俺と決闘をしろっつてんだよ。俺が勝ったらその女の子に今後一切難癖をつけて乱暴するな。」
そして不良Aは笑って
「ギャハハハ!こいつマジか?見ず知らずのガキ助けるために体張るってよ!」
「俺たちはここいらじゃ名の通った黒雷だぜ?俺たちにケンカ売るってんならどうなるかわかるよな?」
確かにこいつらにケンカを売ったら後々面倒なことになりそうだ。だが、幼女を見捨てて引き下がるほど俺の人間はできちゃいない。
「知るか」
「ケッ、いいぜ。なら俺とタイマン張ろうじゃねぇか。ルールは降参、続行不能、死亡で決着。最後まで立っていた方が勝ち。テメェみたいなノータリンにはこんな簡単なルールがちょうどいいだろう」
「わかった。それでいい」
『決闘;女の子を賭けたケンカを開始します』
俺は開始と同時に『電光石火』を発動した。これは単純な加速能力ではなく、発動中スタミナをどんどん持っていかれる代わりに自分の速度を上げ、周りの行動のスピードが下がったように感じ、跳躍力など移動に関する身体能力が微妙に上昇するという3つの能力が合わさったものだとここ数日の試し打ちで判明した。アビリティカードは単なる飾りのようだ。テキストも中途半端にしか書いてないし、数字やイラストはおそらく管理人である少年の好みで適当に書いたのだろう。
俺はもともと運動能力がそんなに高くなかったが、『電光石火』のおかげである程度戦えるまでにはなっていた。実際序盤は不良Aを圧倒していた。だが、不良Aが「なめるなよカスが」と言った途端突然状況が変わった。スピード、攻撃力が格段に上がり、『電光石火』でもついていくことがやっとといった状態だ。さらに不良Aのアビリティ『火掌』で窮地に立たされる。これは名前の通り手に火を灯し掌打で攻撃するものだ。単純ながらやけどの追加攻撃で俺はかなりのダメージを負った。
「何故だ……?」
俺は無意識にこんなことを口にしていた。
「ギャハッハ!俺たちをなめるからだ!」
やはり、この世界に来たばかりの俺がいきなり勝つのは無理だったか……?
「そーいや、俺らが勝った時の商品を決めてなかったな。うし、お前のアビリティ寄越せ」
そこで俺は初めてやってしまったと思う。事前に決めるのを忘れていた。頭に血が上っていた。だが後悔しても遅い。決闘はもう始まってしまった。こちらのチップに関しては相手の言いなりになるしかないだろう。
それから俺は致命打をどうにか避けてはいたが、少しずつダメージを蓄積させていった。
「おうおう、もう立ってるのもやっとか?俺たちにケンカを売ったこと後悔するんだな!」
そういって『火掌』はさらに勢いを増す。今度こそとどめを刺すつもりだろう。俺はあきらめかけていた。
「あきらめちゃダメなのじゃ!今までの中に必ず勝つためのヒントがあるのじゃ!」
あの幼女が初めて決闘に口を挟んできた。女の子が『じゃ』とか変なしゃべり方だな。ん?しゃべり方?
俺は『電光石火』の出力を上げた。出力の調節は『火掌』にもできるのだ。『電光石火』にもできるだろう。そして全力で駆けた
不良Bの許へ
「「は?」」
不良が二人そろって間抜けな声を上げる。不良Bは突然の襲撃に反応することもできない。『電光石火』で速度の乗った拳をノーガードで打ち込まれ吹き飛ぶ。
「テメェ、ふざけんなよ!?」
不良Aが焦りと怒りが入り混じった表情でこちらを睨む
「ふざけてんのはお前らだろうが。タイマンだの言っといて2対1かよ。庵だけ何度も『俺ら』とか言っとれば気づくわアホが」
おそらく不良Bのアビリティは他人を強化する類のもので、『なめるなよカスが』の合言葉で強化を始めるように最初から打ち合わせをしていたのだろう。ズルの常習犯だったようだな。
「そんな証拠どこにある?」
ズルをしている連中の常套句だな。もちろん証拠などないが、対応は考えてある。
「お前がさっきまでの力を出せないことが証拠だ」
「はぁ?今は本気出してねーし。決闘に関係ない俺の仲間を故意に傷つけて俺の戦意を喪失させる作戦なんだろ?」
焦ってる焦ってる。見ていて滑稽だ。
「わかった。この決闘は俺の反則負けでいい。ただし、お前はあいつがいない場所でもう一度今と同じだけのスピードと破壊力を持った攻撃を出すことができるかどうかを当てる決闘をしろ」
「そんなの受ける義務はないはずだが?」
「確かにそんな義務はない。だが、ここで俺が負けてアビリティを失ったとしてそれだけで済むと思うなよ?お前らの手口を拡散してもう二度とお前らが決闘で勝利する機会をなくすくらいのことはできるはずだ。例えお前らがこの辺を取り仕切ってる悪徳ギルド所属だとしてもな。もし俺の推理が間違っていたら決闘に勝ち続けられるだろうがな。この決闘を拒否するということはズルを認めるってことだぞ?」
ここまで言ってようやく不良たちはズルを認めた。
「仕方なかったんだよ」
と不良Aことザークが話す。
「俺たちのギルドはお前が言っていた通りかなりの悪徳ギルドだ。この付近のギルドを力で押し付け、アビリティや金、アイテムを巻き上げている。実行しているのは俺たちのような下っ端だ。」
続けるようにして不良B、リクが言う
「下っ端はボスの言うことに逆らえないんだ。俺たちだってもともとはボスに壊滅させられたギルドにいてまっとうに生きてきた。この世界で生き残るためにはあのクズみてぇなボスの元につくしかなかったんだ。ほかのギルドを脅して俺たちを入れないようにしていたらしい。」
「お前たちの言い分は分かったのじゃ。特別に許してしんぜよう」
女の子がかなりの上から目線で話す。名前はレイというらしい。
「じゃが、そのボスとやらは許すわけにはいかぬのぅ」
「それは俺も同意見だ。しかし、レイよお前と俺たちのギルドだけで黒雷を倒せるのか?」
「どうにかなるじゃろう。こう見えてもわしはサラマンダ―所属じゃぞ?」
レイの口から出たのは俺が目指していたギルドの名前だった。
ちょっと話に出たアイテムというのは基本的に不思議な力を持つ物体のことを指しますが、高価なものという意味もないわけではないです。