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全てが集まる異世界で  作者: トーマス
第1章 異世界体験入界
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第5話 初めての決断

しばらくしてカノンが料理を持ってきた。元の世界で食べていた洋食のようなものであり、家庭的な雰囲気も感じさせる、美味しそうなものだった。

「どうぞ」

「いただきます」

もうカノンはこんな簡単な言葉しか発しなくなっていた。せっかくできると思っていた友達ができなくなってしまったのだ。当然といえば当然か。味の方は見た目通りでとてもおいしかった。残り少ないお金で買えるものとしては絶品といってもいいものだ。


「御馳走様。すごくおいしかった」

「お粗末様です」

俺の感想を聞いて少しだけほっとした感じではあったが、まだうつむいている。こんな幼女は見たくないからな。俺はあの決断を口にする。

「春風に入れてくれ」


「はい?」

カノンは突然何言ってんだこの人とでも言いたげな目をしてこっちを見てきた。

「だから、お前のギルド、春風に入れてくれって頼んでるんだ」

「どうしてですか?私負けたんですよ?」

決闘(ゲーム)で決まったことは絶対なのはわかった。現に食事を振舞ってくれたしな。でも、俺が勝ったら絶対にギルドに入らないとまでは決まってないはずだ。」

「それはそうですが……」

「なら決まりだな。春風のサブマスター、佐野祐樹。今入団した。」

かなり強引な宣言にカノンは混乱している。混乱ついでに加入申請を言葉巧みに受理させた。幼女をだましているみたいで気が引けたが、ショック療法だと考えることにしよう。


それから数日たって俺がいる生活にも慣れたのだろうかカノンは出会った頃の元気をある程度取り戻していた。おそらく表面上だけではあるが。

「ユウキさん、おはようございますっ。」

「おはよー、カノン」

そんな挨拶とともにまたも家庭的な洋食が並ぶ。そしてやはりうまい。


2人しかいないギルドなので入った直後からサブマスターの権限を得ることができた。その権限をフルに使い、ギルドの現状を把握してみた。残金は15万レプタ程度。1レプタ≒1円なこの世界ではギルドホームの維持費を考えると今月ですべてを使い果たすことになる。あの少年はこうなることが分かって俺をこの世界のこの場所に連れてきたのだろうか。


「なあ、カノン」

「なんですか?」

決闘(ゲーム)ってどこに行けばできるんだ?」

この質問も当然必要なものだろう。来月も生活していくにはお金を稼ぐしかない。ギルドホームを売ると住む場所がなくなり、元のメンバーの帰る場所がなくなる。旧メンバーが生きているのかさえ怪しいが、ここは守るべきだろう。さらに論外なのがアビリティを売ることだ。そんなことをすればそれこそ脱落確定だ。あとは決闘(ゲーム)で勝って手に入れるしか方法はない。

「この町、ベルガには大きいギルドはないので、あまり強い人がいないという見方で行けばいい決闘(ゲーム)スポットなのですが、ほとんど外に出てこないので受けてくれる可能性は低いのではないでしょうか。ここに住む人たちは私たちと同じように貧乏なのです。となれば少し歩いてキトスという町に行くといいでしょう。あそこなら中規模ギルドが決闘(ゲーム)の受付をしてくれてる時があります。」

といつになく長く説明してくれるカノンに驚きつつお礼を言ってキトスへ向かう。周囲の地図はここに来てから大体覚えたので、迷うことはないだろう。キトスにはバスのような乗り物も出ているのだが、お金がもったいないので歩いていく。大体3時間くらい歩くとキトスに着く。


が、その道中が平穏であるはずもなかった。気の強そうな幼女(カノンと同じくらい)がガラの悪そうな男2人に絡まれていたのだ。俺はロリコンではないが、見過ごすわけにも行かないのでよせばいいのに助けに入ってしまう。元の世界ではとてもこんなことはできなかったのだが、カノンという守るべきものができてしまい、気持ちの変化でもあったのだろう。


「おい、女の子1人に男が2人も寄ってたかって何やってるんだ」

「はぁ?お前なんなの?こいつはおれたちにぶつかっておいて謝りもしなかったんだ。ちょっとお仕置きをが必要なの。わかる?」

「ぶつかってきたのはそっちじゃろうが!」

「ガキはすっこんでろ!!」

不良Aが突っかかってきた幼女を容赦なく蹴り飛ばす。不良Bもそれを見て笑っている。我慢の限界だった。そして、言ってしまった。

「その子をかけて俺と決闘(ゲーム)をしろ」

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