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突発性リセット症候群

作者: 磯野 光輝

 私の友人は、突発性リセット症候群の発症者である。彼はあらゆることに手を出し、努力を惜しまず、成果が出ようとした時に突然、突如としてやる気を失い、全てを無に帰してしまう。私は以前、彼に引っ越しの手伝いを頼んだことがあるが、その時は痛い目にあった。

 その日、彼はどこからか借りてきた軽トラックを運転し、朝早くから私の家の前に来て、念入りに準備体操をしていた。そしていざ仕事を始めてみると、彼の仕事ぶりには目を見張るものがあった。私が1つ荷物を運ぶ間に、彼は2つ荷物を運び、私が1つ段ボールを持つと、彼は3つの段ボールを同時に持った。彼のおかげで作業は予定よりもずっと早く進んだ。

 昼ごろになり、作業も一段落ついたので、私は彼を部屋に休ませ、近くの店に昼食を買いに出かけた。問題はこの後である。少しばかりの感謝の気持ちを表そうと大量の食べ物を買い込み、家に帰ってみると、彼の姿は無く、有るのは出所の知れない軽トラックだけであった。

 それから一週間、彼とは連絡が取れず、不安な気持ちのまま軽トラックと共に日々を過ごした。

 その後この事件は、説明する気はないが、特に問題なく解決した。


 話を変えよう、彼は元来、熱意にあふれ、目標に向かって突き進み、その為には際限なく努力をする、素晴らしい男だった。

 小学生の時には、彼は誰よりも本を読み、誰よりも外で駆け回り、誰よりも正義感が強く、不正を決して許さない、それでいて誰とでも仲の良い、皆の憧れの対象となる男であった。集団の輪と云うものに入れず、常に一人でいた私に話しかけ、支えてくれたのも彼だけであった。

 中学生の時には、彼は誰よりも勉強をし、できの悪い私にも熱心に勉強を教えてくれたりもした。私が志望校に合格できたのも、彼のおかげであろう。もっとも、彼はこの地域で一番の進学校へと進学し、新入生代表の言葉を言うこととなった。

 高校生の時、彼には医者になるという夢があった。その夢を実現すべく、彼は高校で1番の成績を守り続け、模試では常に優秀な結果を出した。合格は確実視されていた。彼はそれに驕ることなく、常に勉強をし続けた。しかし、受験当日、彼は風邪をひいた。一応テスト自体は受けたのだが、結果は散々であった。もっとも、浪人なりなんなりをすれば、彼は確実に受かっていただろうと私は思う。だが彼はそれを潔しとしなかった。彼は優しい男であった、そして優しすぎる男であった。彼は親に迷惑をかけることを嫌い、その道を選ばず、後期の受験で医学部ではない地元の国立大学へと進学した。

 彼は生まれて初めて挫折を知った。

 奇しくも、彼が進学した大学は、私が進学した大学と同じであった。

 大学に入学した当初は、優秀な成績を残していたが、卒業する時には見る影もなかった。その頃から、彼には突発性リセット症候群の症状が見られるようになり、そのエピソードもいくつかあるのだが、特に語る気は起きない。

 

 最近、彼のように突発性リセット症候群にかかるものが多いらしい。それを多くの者が怠け者だと言う。しかし私は彼だけは別だと思う。彼があのようになってしまったのは、全くの不可抗力からであるのだから。とは言っても、世間ではそれを認めてくれはしないし、現に彼は仕事の首になり、現在は親の元で暮らしている。


 この病気の恐ろしいところは、誰にでも、ある日突然症状が現れることらしい。彼らの多くは共通点を持っているらしいが、そうでないこともあるらしいし、その共通点もなんだったかを忘れた。


 ついこの前、私の会社で入社してきた新人が相次いで退職願を出した。また、私の上司も早期退職を決意した。あと、まあ、他の部署も大変らしい。この辺は人伝に聞いたことなので、本当のことはわからないし、たしかめるきにもならない。


 これのおそろしいところは、ひとからひとへ、かんせんするらs


 

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