表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封じの姫と地の獣  作者: rit.
二章
23/33

夢の話が誤解を呼んだらしいこと

 私は、男をじっと見つめた。

 男は、ただ私の言葉を待っている。

 にわかには信じがたいというような、むずかしい顔つきは変わらないけれど。


 私だって、自分で振った話題といえど「夢で会ったの、あなたと」なんてことを言われれば、まず相手が正気かどうかを疑うところからはじめるだろう。

 それを思えば、この男のこの態度は、私が予想していたよりもいくらか誠実だってことにはならないだろうか?

 少なくとも、私が傷つくほどのやり方で変な人認定はまだしてくれていないのだから。


「……助けてやろうかって言われる夢も見たことがあるわ」


 だから、教えることにした。夢のこと。

 まぁ、夢というか、白昼夢というか。妄想な気がしないでもないけれど。

 思えば思うほど、あれは。

 へんなあの夢のことばかりを考えていたから、おかしな方向に想像力がたくましくなったとしか思えない。


「夜、屋敷が燃えていて、呆然としてる私に、あなた似の誰かが言うのよ。面倒くさそうに」


 私は、信じてるわけじゃない。

 夕那のように、これが過去にあった事実だと。


 だって、ねぇ?

 信じられないでしょ?


 そして、今度こそ本当に言葉を失った男に、私はそんな言葉を含んだ視線を投げかける。

 信じられるわけがない。

 私だって信じられないもの。


「……ほんとう、なのか」


 かすれた、声音。

 男からの問いかけに、私は片眉だけをあげてみせた。


 夢を見たのは本当だけど、そこまで衝撃を受けることかしら?

 夢なんてものはそもそもが不可解な起承転結を遂げるものだ。

 男は結構な美形だし、私が覚えていないだけで、どこかでその顔を見たことがあるのかもしれない。

 その顔が夢のなかにでてきたとて、別に不思議はない気がする。


 もっとも。

 偶然として片付けるにはちょっとムリがある展開だとは思わないでもないけれど。

 

 でもまぁ、嘘はついていないし。

 夢を見たのは本当だもの。

 私は少し肩をすくめて肯定の意を示してみせる。


 その瞬間。男の表情が崩れた。

 崩れても美形は美形、お得なのねと、まったく状況に合わない感想を抱いたのはもしかすると現実逃避なのかもしれない。

 男が、私との間にあった数歩の距離を一気に詰めて、腕を伸ばす。


 なに、と思った時には。

 男の顔が妙に至近距離にあって、ついで視界が黒い色でうめつくされた。


「……アケイロ?」


 震える声音が、すぐ耳元で聞こえた。

 抱きすくめられているのだと、気がついたのは。それより数瞬は後のこと――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ