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アラン

ヒヒーン!‥ブルブル‥


広い馬小屋の片隅で干し草に埋もれながら欠伸をする青年。


「ふぁ〜‥よく寝た」


馬の鳴き声が彼の目覚ましだ。

正確な年齢は分からないが19歳ぐらいだろうか。

端正な顔立ちに長身と来ればさぞモテそうだが‥


バシャバシャ‥

前日に汲んで置いた水桶で顔と手足を洗う。

それから剃刀を取り出して髭を剃る。

除毛クリームは貧乏人には買えないので我慢する。


「蝋燭無しの髭剃りも慣れたもんだな〜‥」


薄暗い小屋の中で一人呟く。

それから薄汚れた上着を羽織り安物のブーツを履く。

最後に余った水と古い櫛で軽く髪を整える。


「行くか〜‥」


馬小屋を開けると朝日が差し込んで来た。



“サガータ”

この町の名前だ。

ホーグ大陸にある国“ホンジョルノ”に位置する。

砂塵と見渡す限りの荒野が特徴だ。



アランは町人が活発では無い時間帯に出掛ける。

仕事道具は手押し車と手袋、それに樽だ。



「おはようございます〜」


民家や酒場の裏口の隅に置かれた“ブツ”を回収していく。下水道の無い地域では文字通り“汲み取り式”だ。

頻繁に回収しなければ憚りから溢れてしまう。


「おいアラン!臭いから早く行け!!」


「ハハハ!自分で出した物でしょう?」


「何クソ!」


すっかり慣れてしまった彼は臭いなど気にする事もなく軽口を返す。


「ホレ駄賃だ‥もっと欲しければ玄関掃除もやれ!」


この中年男性は口は悪いが、アランの境遇をなんとなく不憫に思っている。こうしてややオマケしているのだ。


「はいはい‥マクドナルドさん」


次は娼館通りだ。


「おはようございます〜」


「あら早いわね、終わったらお小遣いあげるわ」


「姉さんから金は取れないよ」


「私はあなたの家族じゃないのよ!お金取ったら早く行きなさい!!」


娼館で働くマリーンはアランが産まれた数年は乳の世話をしていた。


彼は父親知らずの私生児なのだ。

産まれて間もなく母親も亡くなり、生涯孤独で定職にも就けない‥




「やっと来たかアラン、臭うぞ」


「尊敬すべき町人の皆様の、ですがね?」


「一丁前に利きやがって」


酒場の店主はかなり冷たい。


そんな時ガラス窓から可愛らしい顔が覗いた。


「あら今日もご苦労様!」


「やぁ‥!」


年頃のアランは目の前の美少女アンに笑顔を向ける。

向こうも満更では無いようだ。


「コラ!娘に色目を使うな!!」


酒瓶で殴ろうとしてきたので急いで帰る。





「もう少しで終わるな」


馬小屋の馬糞もまとめて樽に押し込んだ後は特定の廃棄場所に捨てにいく。


町外れの場所に廃棄されたブツはいずれ畑の肥料や土に還る。


仕事道具を軽く洗って小屋に戻ればメインの仕事は終わりだ。他にも雑事はあるが精々が小遣い稼ぎだ。



貧しくとも懸命に生きるアラン‥

彼の運命は一人の男に変更を余儀なくされる。

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