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最終話 コミュ障、伝説になる。ともだちといっしょに。

「……」

「……」


 ドロップしたボーリング球くらいの特大の魔石と、やたら強そうな黒い長剣を抱えて、ふたりは無言になった。


「勝っちゃった、ね……」

「うん……」


 さっきまでの興奮の反動で、呆然としてしまっているのだ。


「……? あ! レベル!」

「うぉ!?!?」


 ふたりは、レベルが大幅にアップしたのを感じた。急いで確認すると、三十。ドラゴン遭遇前は二十程度だったから、一気に十も上がっている。


「え、うわ、これもうよくわかんねぇわ」


 重ね掛けのバフのせいもあり、もう自分の素のステータスがどうなのかまったくわからないあきなんと、


「あ! スキル増えた!? 増えるんだスキル!?」


 ステータスの伸びは悪いものの、スキルにまた変化があった崇。


「え、スキルって増えるんだ……」

「ね……? えっと、『状態異常予防・回復』……状態異常ってあるんだね!?」

「ね!?」


 ちなみに、上級者の間ではスキルが増えることも稀に確認されている。あと状態異常は普通にある。ふたりが攻撃を食らってこなかっただけだ。出会い頭にパァン! 故に。


「あ、ちょちょちょ、あきなん、アレ!」

「ん? おぉ!?」


 崇が目ざとくなにかを見つけた。駆け寄ると、宝箱のようななにか。いや宝箱そのものである。


「宝箱とかもあるんだね!?」

「ね!?」


 ちなみに宝箱の存在自体は確認されている。ダンジョンボスを倒すと出ることがある、といったものなので、ごくごく一部の上級者以外の間では都市伝説のようなものだが。


「開けようぜ!」

「おう! あ、待って、俺が開けるわ。罠とかお約束じゃん」

「! そ、そだね」


 あきなんが慎重に箱を開けると、幸いにして罠はなかった。中を覗き込む。


「……ポーション?」

「虹色のポーション、だねぇ」


 丸底フラスコのような瓶に密閉された、液体。なお、虹色とはゲーマーのいう虹色であって、水に浮いた油とか透明セロファンのようなあの色である。


「あからさまにSSRじゃん」

「ね? 鑑定の人に見てもらったほうがいいかな」

「そうしよ。しまっておくね」


 崇が宝箱ごと抱えて、それからふと思い出した。


「あきなん、パンイチじゃん。借りてるマント羽織っておこ?」

「! そうだった! ……パンイチマント、参上!」

「おまわりさーん!」


 きゃっきゃしているふたりの前に、光の渦が現れた。これが一層へ戻れるという出口だろう。


「……終わっちゃったね」

「ちょっと、寂しいな」

「また、行こう」

「うん!」


 ふたりはちょっとしんみりしながら、光の渦に足を踏み入れるのだった。





 一層からダンジョンを出ると、まだダンジョン突入から六時間程度しか経っていなかった。腕時計は見ていたが、さっきまで景色が夜だったので調子が狂う。

 ポーションの鑑定してもらって、買取ついでにマントを預かってもらって……と話していると、協会の職員たちが大勢、鬼気迫る表情で駆け寄ってきた。崇にとってはドラゴンより怖い。


「あ、あの、あなたたち!! ちょっとお話を!!」


 上役と思われる中年男性がタックルばりの勢いで飛び込んできた。咄嗟にあきなんの背に隠れる崇と、パンイチマントでイケメンスマイルを振りまくあきなん。


「どうされました?」

「だ、ダンジョンを踏破されたのですか!?」


 なんでわかるのか……とは思ったが、先ほど光る渦から出た先に、腰を抜かした職員らしき人がいたような気もする。崇はそのとき咄嗟に隠れたが。


「ええと……そういうことになりますね?」

「べ、別室でお話を伺ってよろしいでしょうか!?」

「はい。あ、でも……」

「でも?」

「なにか、着るものを貸してください!」


 光り輝くパンイチマントイケメンの笑顔に、中年男性は赤べこのように縦に首を振った。


 貰った服(服がボロボロになって帰ってくる人が一定数いるため、協会で売っているものを貰えた)を装備して別室に通されると、中年男性をはじめ部屋いっぱいの職員に囲まれた。

 登録証を確認されたらふたりとも今日発行であることに驚かれ、「これ壊しちゃったんですけど弁償っていくらになりますか? あと装備燃えちゃって……」と恐る恐る出された槍の有様に絶句され、「これ後で買取に出したいんですけど」と取り出した巨大魔石をはじめとするドロップ品(ベアクローと狼の短剣二本と竜の長剣は持っておくことにした)と五層の光る石(の一部)に目を剥かれ、「これ鑑定してもらえますか? 使うか売るか決めたいので」と差し出した虹色ポーションin宝箱にとうとう気絶された。運ばれる中年男性。流れるような席移動で今度は中年女性がふたりの前に座った。そういうコントみたいだ。


「おふたりで五層のダンジョンボスを倒したのですね?」

「はい、大きな黒い竜でした! もう、こんな! こんな!」


 女性は「黒い竜」あたりで考え込んでしまい、身振り手振りで伝えようとするあきなんを既に見ていなかったが、納得したように頷いた。


「わかりました。鑑定と買取に少々お時間をいただきますが、お待ちいただいてよろしいですか?」

「はい」


 とりあえずツンデレヤンキー(仮)にマントを返してもらうよう、買取カウンターの人に頼んで預け、ふたりは用意された綺麗な部屋で待つ。小腹がすいていたので出されたお茶とお菓子が嬉しい。


「買い取り終わったらごはんいこっか。ナツミちゃん、なにか食べたいものある?」

「お! じゃあさ、売上よかったら焼肉いっちゃう?」

「いいねぇ~! ……まあ、弁償いくらだろな……」

「それな……」


 三十分もしないうちに、真顔の職員たちがやってきて、虹色ポーションの鑑定結果を教えてくれた。四肢欠損を含む怪我を治せる、新発見のものらしい。すごいものだとは思うが、困っている人のためにオークションを勧められたので、協会で手続きして出してもらうことにした。どれくらいになるかはふたりに見当もつかない。

 気になる弁償は、なんとチャラにしてくれた。ほっと胸を撫で下ろすふたり。


 そしてとりあえず、それ以外の買取額を提示してくれた。


 金壱千六百八拾五萬三千円也


「せん……」

「ろっぴゃく……」


 ふたりの思考が止まった。


「あばばばばば!?!?」

「あばばばばば!?!?」


 今夜の焼き肉が決まった。





 その後、ふたりは今まで通り毎日ネトゲし、月イチくらいで各地のダンジョンに遊びに行くようになった。スケジュールに問題がない限りは踏破して、御当地の美味しいものを食べて、遊ぶ。

 オークションの結果は億を超えた。分配して、ふたりとも新しいゲーミングPCを買った。残りは貯金とダンジョンに遊びに行く費用と装備と美味しいごはんである。




 ふたりはいつしか生ける伝説となった。


 ただ、『ナツミとアキナ』の響きから、勝手に美女コンビと思われていたりいなかったり、おんぶスタイルから、子泣き青年に取り憑かれたイケメンという都市伝説になっていたりするそうだ。


「さ、行こうぜあきなん!」

「おっしゃ! じゃあナツミちゃん、お願い!」


 そんなことは気にせず、ふたりは今日も元気にダンジョンに挑む。


「支援!」


(END)

お付き合いいただき、本当にありがとうございました!

俺たちの伝説はこれからだ!

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