メイドのお遊び
窓から差し込んでくる日差しが、今日も快晴であることを伝えてくれる。なんていい仕事日和だろうか。
庭園に出てみれば、心地いい風が髪を撫で通っていく。
「いい天気ですね」
そう呟いた時、おでこに何かがぽす、と鋭く付いてきた。けれど痛みは無い。当然だ。それは紙で出来ていたんだから。
私の足元に緩やかに落下していったそれを拾い上げる。そして助走をかけ、飛ばしたであろう張本人に向けて思い切り投げ返す。
本気で投げ飛ばしたそれは、紙とはいえ威力を増幅させた。それは私に当たった時とは比べ物にならない程の勢いでその人物へと突進していく。狙い通り、おでこに綺麗に命中した。
「った!ちょっとハロンー!痛いんだけどー!てかどうやったら紙飛行機でそんな威力出るわけ〜?」
「やられたから倍返しにしたまでです。さっさと戻って下さい。やがてお昼の時間です」
「え、嘘!もうそんな時間!?もう少し遊ぼーよー」
「嫌です。私がそんな誘いを受けるわけないでしょう」
言葉でピロナを突っぱねれば、彼女はリスのように頬を膨らませた。
「やーだー!ハロンも偶には一緒に遊ぼうよ!仕込みはもう終わらせてるし、後はファルターがどうにかしてくれるよ」
ファルターとは、同じく主であるミネビア様に仕えている執事だ。確かに、彼は私と違って料理はそれなりに出来る。
「ね?いいでしょ?」
腕に抱きつかれ、子供みたいなお願いされる。こうななっては、簡単に折れてはくれないだろう。
「.....はぁ、分かりました。今回だけですよ」
「やった!あと昔みたいにためで話してくれてもいいんだよ?」
「お断りします」
ちぇー、と唇を尖らせながらも、用意していたらしい折り紙を持ってくる。
それから、2人で庭に座りながら紙飛行機を作った。
「なんで紙飛行機なんですか?」
「懐かしくない?昔一緒に作ったじゃん」
「まぁ、そうだけど」
地面が土なせいで少し折りにくい。
「出来た!見て見てハロン!出来たよ!」
「そう。良かったわね」
えい、と言われた途端、鼻に紙飛行機が当たる。
「ピロナ?」
「それ、広げてみてよ」
不快な気持ちが拭えないまま、言われた通り紙飛行機を広げる。そこには
『ずっと友達でいようね』
そんなメッセージが書かれていた。
ピロナが望む限り、私はピロナの友達だ。なんとも言えない気持ちを抱えても、空は晴れ渡る快晴だった。