観光、そして予兆
おにくと申します(*>∀<)ノ♪
新しい街に着いたとなればまずやることは観光だ。俺とウィンディとユキは買い出しという名の食べ歩きに、シェルンとギャラは宿を探しに二手にわかれた。二人に丸投げしているように見えるが、これはしっかり話し合った結果、宿探しは俺たちに任せられないという結論が出てしまったためである。
「では夕暮れ時にここで集合しましょう。くれぐれもお金の使いすぎには注意してくださいね」
ということで買い出し班の俺たち三人は中華街のような場所を巡ることにした。
「おいしそうだな〜これとかお酒に合いそう!」
「ラーメンに餃子……!しかも杏仁豆腐まで!?……一つだけなら大丈夫よね?」
「中華以外もあるんだな。こ、これはカツ丼!もう我慢できねー!」
各々が買いたいものを買う。果たしてこれは買い出しと言うのだろうか。
『マサヨシ!あそこメロンソーダフロートある!買ってきて!』
普段ならめんどくさいからと断るところだが、今の俺はテンションが最高潮。飲食物を買うことに対して歯止めが聞かなくなっていた。安心しろ、貯金はたんまりある。
「今夜はご馳走だー!」
「すみませんでした」
俺たち三人はドアの前で深々と土下座をした。
「私、お金の使いすぎには注意してと言いましたよね?」
シェルンの笑顔の圧が怖い。あの聖女のようなシェルンが怒った……
「すまない、俺の人選ミスだ。このバカ三人は散らすべきだった……」
「ギャラは何も悪くありませんよ。マサヨシ様たちも反省されているようですし、今日の夜ご飯抜きで許してあげます」
「シェルンやさしい……すき」
「はいはいありがとうございますウィンディ。ということで私とギャラはこれから夜ご飯を食べてくるのでお留守番よろしくお願いします。実はある路地を抜けたところでとても美味しそうな焼肉屋さんを見つけたのですよ」
「え、どこどこ!?」
「悪い子には教えてあげません。ギャラ行きましょう」
「あ、ああわかった」
バタンとドアが閉まると俺たちはすぐに顔を寄せあって作戦会議を始めた。
「こっそり尾行しないか?」
「あなたね……私もそれがいいと思うわ」
「でも待って。シェルンは身を隠すのが得意なだけあって見つけるのも得意なんだよ。僕たち素人が尾行したってすぐバレるに決まってる」
「くそっどうすればいいんだ」
「さすがシェルン、強くてかわいい」
「そこで僕に提案があるんだけど……」
私はギャラと共に宿を出た。あの悪い子三人は今頃どう私たちを尾行するかを考えていることだろう。
「ふふっ」
「どうしたお嬢様?」
「いえ、平和な日だなと思っただけです。それとギャラ、もうお嬢様はやめてください」
「二人だとどうしてもな。口調はまだしも言い慣れない『シェルン』より『お嬢様』の方がしっくりくるんだ」
ギャラはシェパード家に仕えていた元傭兵だ。ウィンディも同じく。
「それでも私はもうシルルド・シェパードの名を捨てたのですから、どんなときでもシェルンと呼びなさい」
「わかりましたよお嬢様」
ギャラと二人でいるとあの頃を思い出す。
私は幼少期、よく部屋を抜け出してはギャラに剣を教わっていた。いつかお父様やお母様のような冒険者になることを夢見て、ひたすら剣を握った。
あの頃の日常は戻ってこないことは少し、いやだいぶ寂しいが、こうしてまたギャラやウィンディと一緒にいられていることは素直に嬉しかった。
「ギャラ、今日は早めに」
「伏せてお嬢様!」
下げた頭の上ギリギリを何かが通り過ぎた。それは水の槍だった。
「外れちゃったか〜ざんねん」
声の主は同い年くらいのツインテールの少女。
「お前は誰だ」
「私はね〜すばり!魔王軍幹部第三位のアーデンちゃんだよ〜」
「魔王軍幹部……!?」
全身が強ばった。突然の出会い。
「俺たちに何の用だ」
「なーんか強い人たちがいたから〜計画の邪魔になる前に始末しようと思っただけ〜。本気出してないとはいえ避けられちゃったし、私はもう行くね〜ばいばい」
そう言ってアーデンと名乗る少女は軽々と建物の上を移動し去っていった。私は全身から力が抜けてその場に座り込んだ。
「魔法を、感知できなかった……」
私たちはあんなのと闘う運命なのだろうか。
どうでしたか?
予兆って響きかっこよくないですか?
次回は炎の街初めての仕事!お楽しみに!(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク




