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ダンジョン

遅くなってしまいましたが、第4話、完成です!

少し長編ですが、今後ともよろしくお願いします。


最近、変なことを耳にした。

どうやらみんなの職業には、それぞれ「秘伝の書」…みたいな、「虎の巻」…みたいなものがあったりするらしく、みんな、それを見て、効率の良い戦い方を模索しているみたい。

何それ…

ここ三か月の俺の頑張りは無駄だったのか。

…ていうかなんでみんな知っていながら教えてくれんかったんだろ。

僕もいろいろ学びたいので今日図書館に行こ。

そのため、僕は今王の間にいる。

「…で、今日はどうしたのかね?カゲイチ・ヒグチ殿。」

「王宮の書庫を使わせていただきたいと思い頼みに来た所存です。」

クリードさんの瞳が揺らぐ。

「そうかそうか、しかし、あそこには入ってはいけないことになっておるが。」

は?

「ですが、他の勇者の方は使っておられましたが。」

「そなたの見間違いではあるまいか?」

いやいやおかしいおかしい。

あ、これもしかして僕だけ省かれている感じ?

「見間違いではありません!実際にこの目で見ました!」

「この話はもう終わりだ。下がれ。」

「し、しかし…。」

このままじゃ下がれない。ふざけるな。

必死に引き下がらない僕の姿を見て、見かねたように宮廷魔導士のおっさんが前に出てきて…

「そなた!陛下に対してなんと無礼な!」

無礼はそっちだくそ野郎

「すぐに出ていけ!」

「わかりましたよ…」

僕はあきらめたふりをして出ていく。

絶対にあきらめないからな。

…というわけで、今僕は王宮の図書館にいる。

警備を抜けるのは意外に簡単だった。

まずは影魔法の影収納というスキルを使い、影に体を沈める。

そして書庫の本棚の影に出る。いたってシンプル。

…お目当ての本棚は2分ほどで見つけられた。

そこにはすべての職業の秘伝の書があった。

へ―、五十音順なんだ。

鍵魔法の書…、神楽の書…、加護魔法の書…?

あれ?ねえぞ。

え…。

放心状態である僕の目の前に紙切れが落ちる。

なんじゃこら。

ん、手紙?

ふむふむ。

へ―。

ほー。

あったじゃん。

いやもうめちゃくちゃ書いてあった。

あれでも なんで書面なんだろ。

本にしてくれたらよかったのに。

まあ、いいや。

こんなに小さいと持っていけるからいいな。

ま、どうせこんなに小さいとみんなわかんないし。

もらっちゃえ。

「ちょっと拝借しますね~。」

そういって僕は書庫を後にした。


小松は今、自室にいた。

最近ものすごく充実している気がする。

前世は勉強というものがあったからあんま自分の好きなものを進められなかったけど、この世界ではすごく自分の好きなことに打ち込める。

みんなも、書庫にある本を見てからそれぞれ能力が格段にアップした。

そういえば、みんなが本の存在は樋口に伝えるな、とか言っていたけどどうしてかはわからない。

でも、最近になって樋口も力つけてきたよな。

やっぱり、樋口も頑張ってるのか…。

俺も負けてらんねえ。

小松が席を立った時、扉の外からこんこんと音がした。

「はい。」

「お手紙です。」

「俺に?」

持ってきた彼の手を見るとそこには、映画とかでよく見る赤い蝋を閉じ口につけた手紙があった。

「もらおう。」

「では、これで。」

「ありがとう。」

彼は退出した。

そして手紙を開いた。



すごい。

あれから格段に力がアップしている。

この調子だとあと一週間で他の勇者を超えられるかもしれない。

その時、小松がみんなに声をかけた。

「あと10分でダンジョンに潜るぞー。」

「はーい。」

みんなが沸く。

やはり、初のダンジョンだもんな。

みんなすごくうれしそうだ。

しばらくした。

僕たちは今エルメスダンジョン第13階層の崖を歩いている。

エルメスダンジョンとはエルメス王国のダンジョン、という意味。

第13階層とは、100階層ある内の13階目ということだ。

そして今僕らは65階層まで落ちる断崖絶壁を前にしている。

先ほどまでここには魔物がいた。

魔物とはこの世界に蔓延るモンスターのことだ…、で、あってるっけ。

とりあえず、僕らはここまで順調に魔物を倒してきた。

今倒したのは「デュラハッド」、よく聞く「デュラハン」とかいうやつの進化版?…らしい。

とにかく、僕らは今、13階層のボスを倒して休んでいるところです。

「意外と簡単だったな~」

そう豪語するのは「炎帝」の足高。

「ちょっと、割と死にかけてたじゃないの。」

そう言うのは「侍」の浅田。

どちらも今回の戦いの功労者である。

あと、「重騎士」の轟音時とか、「癒し手」の岩野。

そして、われらが「勇者」小松。

この三人も含まれる。

…あ、俺?

俺はというと後方で見守り隊の一員だ。

先ほどの五人以外ほとんどがそうだった。

ともかく、今は休憩ちゅ…、

「魔物だー!」

崖の下を見ていた近野が叫ぶ。

なんだよー、今せっかく休憩してたのに…。

でも、そんなのんきなこと考えている場合ではなかった。

なんと、すぐそこまで魔物が来ているらしい。

しかも65階層の魔物だ。

どうしてこうなったかというと、崖を上れる魔物が65階層にいて、うっかりここまで登ってきちゃった感じ。

「やばいやばいやばい!」「死にたくない~」「なんなんだよも~!」

みんなパニック状態だ。

え、死にたくないよ。

ついてきてた兵隊さんもいつの間にかいなくなってるし。

小松が半狂乱状態のみんなに撤退の指示を出した。

みんなが急いで崖の端をつたって逃げる。

やべっ!もう登り切りやがった。

みんながさっきまでいた場所を見ると、大量のでかい「G」がいた。

キモッ!

女子たちの足が速くなる。

あいつらの速度は尋常じゃなく、すぐに追いつきやがった。

「うわー!」「キャー!」

みんなが叫ぶ。

先ほどの五人は冷静に協力して一体倒した。

いやでもきりがない。

まずいぞ、奥には百匹以上いる。

俺も何匹かいなしているけど、魔力が底をつきそうだ。

するとその時…、

「おいみんな!転移の準備ができたぞ!」

相田の声がした。

それと同時にみんなが相田のもとに集まる。

俺も行く。

そして、俺の背中に「G」の顎が到達するのと同時に、俺らは転移した。

…。

転移したのは13階層の反対側らしい。

すぐに小松が人数確認をする。

……。

全員いるらしい。

良かったー、正直言って魔力残量ゼロなんだよねー。

よかったよかった。

…あれ?

なんだこれ。

なんか腹から出てる。

まるで鉄の剣みたいだ。

そっくりだなー。

刺されたと分かった時には、目の前が一面赤くなっていた。


今、僕は何を考えているのだろう。

安堵と恐怖のこもったみんなの騒ぎ声でさえ僕には届かなかった。

僕は静かな世界でたった一人、樋口の背中を突いた。

その一突きは小松が今まで見た中で一番遅かった。

でも、この嫌な感触だけは一番強く手に残った。

意外にも後悔はしてなかった。

僕は今、何を考えているのだろう。


突如衝撃が走った。

それがいたみだったのか小松に刺された驚きなのか分からない。

だが、俺の胸の憎悪の念が爆発したのは確かだ。

しかし、頭の中は真っ白だった。

剣が抜かれたとき、ずっと考えていた言葉が出た。

「…は?」

その時、みんなが止まった。

世界の時が止まったように。

ただ、ゆっくりと、小松は剣を下ろしていた。

そして、剣の先が完全に地面に触れたとき、大きな笑い声が、あたりを震わせた。

「あははははははは!www」

声の主は、足高だった。

「よくやったなぁ、小松ぅ!」

続いて轟音時もくすくすと笑いだす。

「小松、ファインプレーだ…www」

は?

「ファインプレー」て…、意味わからん!

どうして笑ってんの?みんな。

「さて、どうする⁉みんな!」

「どうする?」って、何をだよ。

「樋口を殺す⁉殺さない⁉」

は?

いーやいやいや。

これはさすがに「殺さない」一択でしょ!

ありえないありえない。

――でも、みんなの反応は、僕の予想してたものとは違かった。

「はーい。」「もちろん。」「殺す一択!」

反対だろそこは。

「というわけで、満場一致で樋口君は、切られまーす。」

うわぁ、もう集まりやがった。

「では、処刑人に、「勇者」の小松さん、お願いします。」

しかし、小松は下を向いたまま動かない。

「おーい、小松―?」

小松…?

「あれれ?やりたくないのかなぁ?」

小松は少し震えている。

「よし!俺が切ろう!」

「何を…、グハッ!」

今度はさっきよりも範囲のでかい傷だ。

「う…、ぐう…。」

「出るEXP意外にお前の価値なんか、無いんだよ‼」

そして崖の下へ蹴られた。

彼の憎悪は頂点へ達していた。

殺してやる…。

殺してやる……。

殺…、し…、て…、やる…。

そして僕の目の前は暗くなった。

気絶する前に見えたのは、後悔と悲しみのこもった、小松の顔だった――。

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