閑話《壱》 ある日の想い
こんにちは! こんばんは! おはようございます!
拙作を再びご覧いただいてくれた方、初見の方もありがとうございます!
昨日投稿の「第五話」はいかがでしたか?
今日投稿するお話は、今までとは少し風変わりです。
「第9回 オーバーラップWEB小説大賞」に応募中です!
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それでは、楽しんでください!
高速道路を無数の車体が通る音に紛れて、当時、彼女らの世代で人気だったグループの曲が流れていた。
四人乗りの白の軽自動車。そこに、大人になった彼女は助手席に座っていた。上品さを加えた黒のワンピース姿の彼女は大人の佇まいを持っていた。
運転席に座るのは、真面目な印象を受ける目元の優しい長身の男だ。彼はスーツを丁寧に着て、爽やかな笑顔を見せていた。
「奈波、もうすぐおばさんの家に着くけど大丈夫? 緊張してる?」
「ううん、平気。雄大と結婚するんだって思うと嬉しくてね。私、この日を楽しみにしてたから……」
そう言いながら、彼女は照れたときの癖で、指をさすっていた。
「そうか、僕もだ。奈波と結婚すると思うとこれからが楽しみで仕方がないよ」
お似合いすぎる二人の車は時おりパーキングエリアに行きながら順調に進んでいた。
二人の愛のカタチは確実にその色を帯びようとしていた。
***
新幹線でまだ一時間ほどしか経っていない頃、俺はようやく、自分の居場所を実感できた。十五歳の俺ではなく、二十六歳の俺が帰ってきたような気がした。
ここは新幹線内で、亡き祖父母の家ではないと気がつくことができた。そうじゃないと、今まで見ていた景色が夢か幻想か見分けがつかなくなる。恐らく、俺はよだれを垂らしながら、窓ガラスにもたれかかって気を失っていたか、寝ていたのだろう。
「……奈波は俺のこと、どう思ってるんだろう」
あの日、俺がした事は許されない。誰にもバレなくても、誰も気づかなくても。俺はあの日の俺をずっと憎んで、悔やんでいる。
合わせる顔なんてないはずなのに。奈波の結婚相手が聞いたらどうなる? まず、俺は社会から追放だろう。
「……どうすれば、よかったんだ……」
誰も止めることが出来ないはずなのにな。自分のなかのケモノなど、どんな大層な理念を持って、理想を持って、目的を持っても。
ココロのケモノは、誰にも止められない。最低なケモノになるしかないのにな──。
いつしか、無精髭の誰かさんが最後、俺たちに吐いたセリフを、俺は名言のように何度もなんども頭のなかでリピートさせる。
最低なケモノと、共生するには──。
──どうすれば、奈波を悲しませずに。
落ちていく感覚のなか、答えと罰を求めるように俺は考えた。
だけど、睡魔なのか幻覚なのか分からない映像がいつの間にか意識を引っ張ってきて、俺はその景色に身を任せた。そこでは、妖艶な笑顔の奈波と、くらくらしそうな体温だけがはっきりと感じることができた。
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