第五話 夏の始まり
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結局、体を休めることなく、のぼせて風呂からあがった俺は、扇風機の前で涼んでいた。
「七樹、また髪濡れっぱなしじゃない? ちゃんと乾かさなきゃ風邪ひくよ?」
奈波が近寄ってきて、俺の隣に座った。その手にはタオルが握られていて、俺の髪を乾かそうとしているようだ。
「夏だからすぐ乾くかなって思ってさ、俺ストレートだし、いいかなって思って……」
「七樹にくせっ毛になる呪いかけてあげる……。すぐ乾かさなきゃうねうね髪になればいいのにね」
ジト目で奈波に睨まれる。不機嫌な表情の奈波も可愛い。
「とりあえず、乾かしてあげるから下向いてて」
奈波に言われるまま少し下に目線を向けてから数秒後、優しい手使いと共に髪が撫でられる。奈波の手使いめっちゃ気持ちいい。まるで、頭が溶けるような優しい感覚に陥ってしまう。
頭を撫でられる感覚を味わっていると、背中に柔らかい質量を持つものが押し付けられているような感覚があった。もう、分かる。奈波が鼻歌を歌いながら俺の髪を撫でているため、距離が近くなって、胸が無意識のうちに押し付けられているのだ。
背中に灯るは微熱。そして、男子では味わえない柔らかな感触。もちのようなそれは、俺の理性を壊しにかかる。異性としての自分を目覚めさせてしまう。
「……奈波。……ッ、ごめん、髪乾いたからもういいよ、ありがとう」
鼻歌が止み、こちらを覗くようにみてくる奈波。そのせいで更に胸が背中に当たってしまう。
「え、もういいの? まだ半分くらいしか乾いてないけど……」
「大丈夫だいじょうぶ、あとはすぐに乾くから!」
もう我慢出来なかった。俺は急いでトイレに駆け込み、感触を思い出しながら、快感を吐き出す。
「うっぐ……。な、な、みぃ……」
一瞬の快楽と熱いため息も一緒に吐き出した俺は、数十秒後、身体の熱が奪われるのを感じながら、考えた。
好きだ。奈波のことが好きだ。でも、欲望じゃないんだ。異性として見てるわけじゃない。身体目当てじゃない。
押し付けられた胸は無意識か計算なのか。いや、奈波に限ってそれはないはずだ。天然なんだから。
でも、吐き出した快楽の微熱はねちっこく残り、トイレから出てこれたのは十数分後だった。
トイレからリビングに戻ると、お茶を飲んでいた奈波は不安そうにこちらに向かってきた。
「七樹、トイレ長かったね。その……体調は大丈夫?」
一瞬、どきりとした。だって、奈波が俺の欲望に気づいているのかと思ったからだ。けど、俺の腸内環境を気にしてくれていたようで、ヤクルトを分けてくれたからだ。奈波はそれの冷凍したものを持っていた。
「いや、急に腹が痛くなってさ、ちょっと……な?」
内容を伏せるように誤魔化した。それに奈波は納得してくれたようで、ゆっくり休んでねと労わってくれた。
気がつけば、小さい時計の針が十を刺そうとしていたので、寝室へ向かい、もう眠たくなる頃だろう親戚の子ども分の布団を敷いて、俺は奈波と共に親戚のオッサンたちと話していた。
「ななちゃん、かじゅき、いっしょにねよーよー」
親戚の子どもの一人、最年少のさきが俺と奈波に寝ることを提案してきた。彼女は九時を過ぎたあたりから、ボケーとしていて頭が揺れていたのでそろそろ眠たいだろうなと思っていたのだ。布団を敷いていて正解だった。
「んじゃ、奈波と一緒に寝るか?」
「ううん、みんなでねるの。ななちゃんも、かじゅきも」
「だってさ、みんなー、そろそろ寝よっかー!」
奈波の声に仕方ないなと肩を竦めて親戚の子ども──特に男子たち──を俺はまとめ、彼らと一緒に寝室へ向かった。
男子と女子に一応は分かれ、俺と奈波を目印に分断させ、布団に潜らせる。騒がしい子どもたちの囁き声も数十分もすれば、皆、眠りについた。
「奈波、起きてるか?」
俺はひそひそ声で奈波の名前を呼ぶ。去年は二人揃ってひと言も話さず、寝てしまったから寝る前に話すのは二年ぶりだった。
「うん、起きてるよ……。どうしたの?」
ころんと奈波がこちらを向いた音がして、俺もそれに合わせる。月夜に照らされ、奈波の笑顔が可愛かった。思ったよりも近い距離にドキドキしていると、奈波は俺の手を握った。
「──ッ!」
出そうになった声を抑える。驚いて手をぴくりと動かしてしまった。
「ごめん、ちょっと手が寒くて……。あっためてくれる?」
「……おう」
奈波の手は確かに冷たかった。俺の体温が徐々に奈波に伝わり、少しずつ温もりが行き渡っている。
「七樹、あのね。私さ、好きな人がいるんだ」
その言葉と共に、奈波の腕はするりと伸びた。
右手は俺の手をつかんで。左手は俺の下腹部に添えて。
右手をそっと自身の胸元に近づけていた。さらさらのシャツの生地の感触が手に伝わり、その奥にある背中越しに感じていた柔らかさが手に感じる。少し固いのは、下着──ブラがあるからだ。
「……な、な、み?」
その意味に気づいたとき、俺はこの世で最もまぬけな声をだしていた。
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