第四話 自制
こんにちは! こんばんは! おはようございます!
拙作を再びご覧いただいてくれた方、初見の方もありがとうございます!
昨日投稿の「第三話」はいかがでしたか?
「第9回 オーバーラップWEB小説大賞」に応募中です!
たくさんの応援・いいね・感想をよろしくお願いします!
それでは、楽しんでください!
ぐつぐつと鍋が煮える音、それに伴い、ダシの香りと魚の空腹を助長する美味しそうな匂いがリビングに充満し、親戚のオッサン共と俺は一様に歓喜の声をあげた。
「お待たせしましたぁ! たくさん食べてくださいね!」
鍋敷きを引いたテーブルに笑顔で鍋を置く奈波。チェック柄のエプロンが似合うのはもちろん、緑のギンガムチェックのミトンが似合いすぎてやばい。とにかく、可愛すぎた。
「……ん? 七樹、お箸どうぞ」
「あ……あぁ、ありがとうな」
見とれていてしまっていたとは口が裂けても言えず、数秒反応に遅れて箸を受け取ってしまった。
「どう? 美味しい?」
隣の椅子に座った奈波は、好奇心の塊のようなきらきらとした瞳で聞いてきた。その目で見られるのがどうも気恥ずかしく、俺はなるべくぶり大根を見ながら、
「めっちゃ美味い……。作ってくれてありがとうな」
「ふふっ、どういたしまして。結構頑張ったんだよ? めっちゃ練習したんだから」
照れながら言う奈波は癖なのか指を擦りながら、微笑んだ。
その指には絆創膏や少し荒れている部分があって努力の跡が見られた。
俺のために頑張ってくれたんだな、そう思うとすごく愛おしく感じてしまう。従妹とか、関係ないのかもしれない。奈波が彼女になってくれたら、俺が好きなものをたくさん作ってくれるに違いない。それに──あの身体を自由に出来るかもしれないのだ。
食後のあと、デザートに祖父母や親戚からもらったアイスを食べながら、奈波と雑談を交わしていた。
「奈波、鼻に付いてる」
「え? うそ、恥ずかしい……」
そっとティッシュで鼻に付いたアイスをとる。そのときに俺はまじまじと奈波の顔を見た。目は少し切れ長で瞳が爛々と輝いている。肌、めっちゃ綺麗だな。ニキビやシミはなく色白だ。少し上気していてほっぺが赤い。メイクは素人目でも薄くはしているように見えるが、それでも素材が良いからメイクなしでもめっちゃ可愛いのは知っている。
「それじゃあ、お風呂はいってくるね」
「おう、あんま長風呂すんなよー」
「うわ〜、七樹デリカシーなさすぎ。引くわー、……なんてね」
冗談を嫌味で返されるとさぁ、泣きそうになるよね。
去り際にペロッと舌を出した奈波が可愛くて、俺の心は高鳴るばかりだ。頭がくらくらしそうになり、自分の欲望を抑えるので必死だった。
風呂場から鼻歌が聴こえてきて何だか、俺も嬉しくなった。
「かずにぃ、ナナちゃんみにいこうー?」
「君とんでもないこと言うな?」
親戚のエロガキが奈波の裸体を見ようと悪い顔をして浴室へ向かおうとする、俺は欲望の囁きを振り払い、理性を持ってエロガキを阻止した。その瞬間にも、俺のなかの男が膨張しそうになったのは言うまでもない。
奈波が風呂からあがるまで俺はリビングでオッサンたちと話していた。缶ビールの残骸がその辺りに転がり、慣れない酒臭さとチーズやら色々な食品の匂いが混同するなか、一人の無精髭に白髪混じりの茶髪にうねりがあるオッサンに話しかけられた。切れ長の目が奈波と似ているのは彼が奈波の父親だからだ。
「それにしても、カズキぃ。おめぇ、彼女とかそろそろ出来たかー?」
「いやー、それがまだなんすよ。彰人さん、奈波はどうなんすか?」
「けっ、おめぇはまだ童貞かよ。俺はもう十五のときは女とヤッてたぞ。奈波に彼氏なんか出来るかね。学校では地味みてぇだしな。まぁ、あの巨乳ならいつかはイけるか」
このオッサンやばすきだろ。仮にも年頃の娘を持つ父親だぞ? 下ネタのオンパレードに俺は押し黙ってしまう。
「ま、もし、二十までに彼氏が出来なかったら七樹、そのときは頼むわ。あのくっそエロいおっぱいはくれてやるよ」
「まじでそういうの奈波の前では言わない方がいいですよ」
肩をばしばし叩きながら言われても、押し黙るしかない。この人こんな人間だったのか。結構オラついてるところとか子どもながらにカッコよかったのに。密かに憧れとイメージのギャップに落ち込んでいると、奈波が風呂からあがってきた。濡れた髪が艶やかで色っぽかった。
「ただいま〜、あ、パパと七樹が話してる。だめだよ、無理に楽器教えてバンド勧誘するのは」
「あ? してねぇよ。こいつの女の話だっての」
「え! 七樹、好きな人いるんだ!! どんな子!?」
やべっ、奈波が反応した。恋バナ好きの奈波は一層キラキラした目でこちらを見てくる。
「いない、いないって」
やりやがったな、このオッサン……。
必死に誤魔化して、俺が風呂に入るまでは十数分の時間と酒とジュースが必要だった。
風呂のなかで俺はひと息ついた。落ち着くと、入浴剤を入れていないのに微かに甘い香りが漂い、奈波が風呂に入ったあとなんだと妙にドキドキして落ち着かなかった。
やっぱり、奈波のことが好きで、俺は異性としてみてしまう。オッサン──奈波の父親が言う通り、あの大きな胸に触れたい欲望はある。でも、だめだろ。従妹なんだから。そう、自分に自制をかけた。
この日、俺は従妹の奈波に恋をした。だけど、自分を抑えてもいた。しかし、男子中学生の自制などたかが知れていた。
この気持ちが、俺の後悔と罪と、奈波への嘘の始まりだった。
いかがでしたか?
毎日投稿ですので、明日もご覧いただけると嬉しいです。
いいね・感想頂けると喜びます!
それでは、また明日お楽しみください!