第二話 純粋な自分へ
こんにちは! こんばんは! おはようございます!
拙作を再びご覧いただいてくれた方、初見の方もありがとうございます!
昨日投稿の「第一話」はいかがでしたか?
この度、「第9回 オーバーラップWEB小説大賞」に応募することになりました。
たくさんの応援、よろしくお願いします!
それでは、楽しんでください!
次の日、朝から俺たちは大型のショッピングモールに行くことになった。
奈波との距離が急に遠くなってしまったことに苛立ちを覚えながら、奈波の両親の車に乗りこみ、揺られること数十分。
何度も行ったことのあるその場所は俺と奈波には馴染みが深く、たくさんの思い出がある。
俺は主にゲームセンターや玩具コーナーに興味を向けていた。
ちなみに、俺が今もなお、毎日やっているひと昔前のゲームのゲーム機を買ったのはここだった。
奈波と共有して使っていたから、ホワイトピンク色のゲーム機本体には当時は不満があったのを覚えている。
俺と親戚の男子たちは我先にゲームセンターへと足を向けるが、奈波や女子の親戚たちに待ったをかけられる。
不満を俺を筆頭にぶちまけるも、女子の高圧的な口調と数の暴力での口喧嘩に男子が勝てるわけもなく、俺たちは今は亡き祖父母に宥められつつ、奈波と女子たちの買い物に付き合うことになった。
女子は基本的に大人っぽく、小学生のくせに口紅だの、男子入店お断りの、今となっては可愛らしい雰囲気漂う小洒落た服屋に入ったりする。
しかも、一店舗ずつ見て回っていたので、時間がかかって当時の俺は耐えられるわけなく、子どもたちと愚痴を言い合い、休憩所で自動販売機のアイスを食べたり、携帯ゲーム機で遊ぶ方がよっぽど良いと思っていた。
「かじゅき、これどう?」
「やっば! 見てみて、かずにぃ、色違いでた!」
「おー、すげぇな!」
他愛もないことを話し、時間を潰していたのを覚えている。
「みんなー、そろそろお昼にしようかー。なに食べたい?」
祖母のその声に俺たち男子は一斉に顔をあげて、各々食べたいものを所望した。
祖父母たちが相談する中、買い物を終えて皆、おませな女子はほくほく顔で出てきたのを見た。
買った服に着替えただろう奈波の姿が目に入ったとき、昨日のように体が熱くなり、心臓がハイスピードで鼓動を立てた。
可愛い。奈波めっちゃ可愛い。なんで、こんな大人っぽいんだよ。
正体不明の感情。奈波を見るだけで胸が異常に高鳴り、目の前の景色が鮮やかに彩られる。ひとつの仮説が思い浮かぶも、それはないと否定する。
奈波のことを好きになるわけがない。好きっていうのはずっと一緒にいたいとか、頭を撫でたいとか、そういうのだろうと思っていたから。
それに、従妹を好きになるわけがない。好きになってはいけないと、子どもながらにそれはだめだと幼い倫理感が訴えていたから。
「……なに」
「なんでもねぇよ。長くてダルかったわ」
恥ずかしいのか、棘のある言い方になってしまい、こんなはずじゃないと心のなかで反省をしていた。しかし、
「……男子って最低よね、みくちゃん」
奈波は更に嫌味で返して、親戚の子どもたちと共に先に歩いて行ってしまった。
俺は奈波が近くにいなくなっても、少しの間、胸の高鳴りは収まってくれなかった。
それから、俺たちはフードコートで食事をとることになった。各自、祖父母や親戚の叔父たちからもらった食費の予算兼ゲーム代を片手に店を回る。
小さい子どもたちもいたため、祖父母か親戚同伴だったが、俺たちはなるべく少ない食費でゲームセンターで遊ぶことを計画立てた。
結局、ファーストフード店のお子さまセットを頼んで、すぐに腹に詰め込み、親戚男子連中はゲームセンターへと向かう。
そのフロアはゲームセンターと玩具コーナーが隣の店舗として機能しており、男子にとってはまるで夢の世界のような場所だった。
「かずきー! ゲームしようやー!」
「かずにぃ、こっちであそぼー!」
「ちょ、待って。皆で一緒に出来るこれしよう?」
時間を忘れて、子どもたちと遊ぶ時間は楽しかった。
しかし、去年までは奈波がここにもいたのになと少し寂しさのようなものを感じていた。
なんでこんな気持ちになるのか、中学生の俺には分からなかった。
こうして、楽しい時間はあっという間に過ぎ、奈波との関係に変化があった夏は過ぎ去った。
誕生日おめでとうをこの年は言えなかったことに少しモヤモヤしながらも、俺は奈波のことを考えながら、一年を過ごした。
そして、中学二年生ながらに友人や先輩、ネットの知識を鵜呑みに性知識も増えた。
自分だけで満たせることも知り、俺は純粋な気持ちを忘れ、徐々に今の俺に近づいていった。
あの日から、時間が経つにつれて、己のなかで増幅していく奈波への欲望を胸に誕生日への期待を寄せて過ごしていくことになった。
いかがでしたか?
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