第一話 変化
こんにちは! こんばんは! おはようございます!
拙作を再びご覧いただいてくれた方、初見の方もありがとうございます!
【Prologue】が終わり、【第一章】がやってきました。
あなたはこの後悔を信じれますか──?
あなたはこの罪を許せますか──?
それでは、楽しんでください!
物心ついたときには、従妹という存在が親友のような関係だった。
奈波とは一年の年は違うが、同じ病院で同じ日の同じ時間帯に産まれたらしい。その日は七夕の日で、星降る夜だったという。
俺たちは、その日から一年に一度、再会し、お互いを祝いあった。
同じ幼稚園、小学校と進み、子供という無知で無邪気に過ごしていた。
しかし、小学校高学年になってくれば、色々と男女の変化をきたす。誰かを異性として好きになるという感情が芽生え始めるのもこの頃だった。
この頃は、奈波は俺の名前を呼んでくれなかった。
「ねぇ、奈波。カズ君じゃなくて、『七樹君』って呼んであげたら?」
奈波の母親が優しくそう言うが、奈波はそっぽを向いて、頑なに言おうとしない。
今なら分かるが、これは小学生なりの小さな抵抗だろう。
「やだ……。カズ君の方が呼びやすいし!」
この頃はその言葉を信じていたが、今はもしかしたら、奈波は俺のことが異性として好きになっていたのかもしれない。
「いいよナナちゃん。俺もあだ名で呼んでいるし」
幼い頃に『ナナちゃん』と呼ぶことを母親に勧められてからは、そう呼んでいた。
女子は小学校の頃から変化をしているが、男子は基本的に無邪気だ。女子の気持ちなんてお構い無しだし、自分の好きなように行動する。
しかし、いつかは変わらないといけない。
変化を来したのは、俺が中学二年生の夏だった。
中学生になれば、男女ともに思春期にはいって劇的に変わる。奈波の家が引っ越すことになった影響で別々の中学に行った俺は当時、奈波との関係に困惑していた。
去年まではランドセルを背負っていて子供っぽかった子が、こんなにも大人の色気がでるのかと俺はクラスの女子とは比べ物にならない大きな胸部とくびれやショートパンツから見える真っ白な太ももに視線が釘付けだった。
まだ子供だった俺はこの感情が自らの性欲が作用するものだとは知らずに訳もわからず奈波にみとれていた。
それから、晩ご飯を食べて、風呂にはいり、酒に酔った親戚たちがテレビを観ながら、笑いあっていた頃。
子どもたちの中で一人でいた奈波に俺はこの日初めて話しかけることができた。
「えっと……。久しぶり。ななちゃ……奈波」
幼い頃から口にしていた『ナナちゃん』という「ちゃん」付けの言葉に恥ずかしさを覚えて、名前を口にした。
奈波はぽちぽちとスマホをいじりながら、俺の方を見向きもせずに、
「……久しぶり」
とだけ言った。冷たいその態度に怒りと寂しさを覚えた。たった一年前までは俺のことを慕ってくれていた子がこんなにもそっけなくただひと言を口にする。
もし、今の俺ならこのとき怒ったりなんてしない。むしろ、奈波は大人になったなぁとどこか遠い目でみるだろう。
でも、このときの俺はどこか不安定な日常を生きていて、毎日イラついていた。今なら分かるがきっと、思春期特有の極度の不安がそうさせたのだろう。
「んだよ、その態度」
ぼそりとひと言。声変わりの途中の未熟な高い声と低い声が混じった中性的な声。しかし、その声には確かな怒りを帯びていた。
「……」
奈波は何も言わなかった。俺はその態度に更に憤慨するだけだった。
「なんで何も言わないんだよッ!!」
この瞬間、色々な感情が俺の頭を駆けめぐった。
まずは、怒り。奈波の態度に腹が立ったから。
そして、恐怖。奈波が俺のことを拒絶しているのかもしれないと思ったから。
最後は、邪欲。なんでこのとき、これが出ていたのか分からないが、このときから、俺のなかの男は大きくなっていったのだろう。
気がつけば、俺は奈波のことをカーペットに押し倒していた。
半袖のTシャツからはみ出る細い二の腕は、健康的に焼けていてとても柔らかい。
悲鳴すら声にでなかったのだろう奈波は、ただこの状態を理解しかねないと言わんばかりに、唖然としていた。
しかし、俺はその表情にみとれていた。可愛かったのだ。とても魅力的に感じたのだ。
風呂上がりでトリートメントでもしているのか艶っぽく光る長い黒髪よりも、少しめくれて可愛らしい小さなへそが見える白いお腹よりも、重力により流れる大きな胸よりも。
ただ、奈波だけがとても可愛らしく、愛らしく、胸の鼓動が今まで聞いたことのないほど速く音をたてた。
いったい、どれほど俺たちはお互いを見ていたのだろうか。
お互いこの状況を大人になりかけている頭で理解し、自分でも分かるほど顔が赤く染まったそのとき、俺はそっと奈波から離れた。そして、すぐさまトイレにこもった。
突然、尿意が襲ってきて俺は真っ白な快感を頭の痺れと共に吐き出した。
この快感の意味を俺はまだ知ることはなかった。たまたまこうして、ひとりのはじめてを終えた俺は、急激に冷める奈波への想いと体の熱を気にしながら、笑顔を作れずに親戚たちの大人の会話に混ざったのだった。
訳も分からない話を聞いていると、自然と体が落ち着いた。
そして、その日、俺たちは何も話すことなく、親戚の子どもたちと共に眠りについた。
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