第十二話 出会い
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彰人さんと奇妙な再会を果たしてから俺は十数分山道を歩き続けていた。山道といっても特段急な坂道が続いていたり、断崖絶壁のな道が続いているわけではないが、学生の頃は楽々と登れていた少し急な坂道が今ではものすごくしんどく感じる。
子どもや学生の頃の無尽蔵な俺の体力は過去に消え去り、今や、一日に一歩歩くか怪しいほどの運動の少なさに基礎体力が極限まで落ちていることに気がついた。
社会不適合者の不名誉な称号が足かせとなって俺を立ち止まらせる。
「……しんど」
思わず、声に出してしまい、夏の暑さに頭がくらくらする。視界がちかちかと暗明を繰り返し、今頃、大量の汗が吹き出していることに気がついた。
彰人さんはもう頼れない。思わず、地べたにへたり込み、日陰に避難するが熱中症はどんどん症状が酷くなる一方。なんとか水分を取り、俺は無意識に右手を動かしながらその意識を一度落とした。
「──おい、七樹! 大丈夫かよ!?」
再び目を覚ましたときには灰色の天井が写っていた。走行音から察するに俺は車に乗せられているのだと自覚した。
俺の名前を呼ぶ声は電話でも聞いた声。兄だ。
「八雲兄さん……」
俺がかすれた声で呼ぶと兄は安心した表情を見せた。
「あー、よかったまじで。ちと手伝いで俺らは駆り出されていたんだがそろそろお前が来るだろうなって頃に車走らせていたらお前ぶっ倒れていたじゃねぇか。急いで冷却アイテム買って冷やしたんだぞ」
「……ありがとう兄さん。今頃俺はヤバかったかも……」
「礼を言うなら俺じゃなくて彼に言いな。お前、初対面だろ?」
兄さんが指す彼とは誰なのか俺はゆっくりと立ち上がってその姿を視認した。
その人物もちょうど信号に引っかかり、こちらを振り向いた。
彼の第一印象は真面目な印象を受けた。目元の優しそうで長身の短髪の彼はスーツを丁寧に着て、爽やかな笑顔を見せていた。
「はじめまして。八雲さんや奈波から話は聞いています。七樹さん。俺が奈波の婚約者の 伊月 雄大です。こんな状態で挨拶するのも失礼ですが今後ともよろしくお願いします」
奈波の婚約者だという彼はこちらを振り向いたままぺこりと頭を下げた。
「こちらこそ。慣れない暑さで倒れてしまったところを助けてくれてありがとう……ございます」
一応、お互いの認識確認が済んで、俺と彼はお互いを知った。
真面目よりの優しさを感じる彼は奈波の婚約者。とうとう俺の目の前に現れてしまった。
「雄大は俺の会社の後輩なんだよ。奈波ちゃんに紹介したらここまできてな。まじでお似合いなんだよな」
「そうなんだ。すごく誠実な方みたいだし、奈波のこと安心して任せられるかも……」
口から出任せのような嘘をつく。だけど感じてしまった。俺はこの人みたいにはなれないと。
「ありがとうございます。七樹さんは奈波の従兄なんですよね。もしよかったら奈波の小さい頃の話とかあれば聞かせてください。俺の知らない奈波のことをあなたなら知っていると思うので」
冗談をめかしながら彼──伊月さんは明るい口調で問いかけてきた。俺との良好な関係を築きたいという意思が見えた。
心のなかでは分かっていた。俺たちは従兄妹同士。結婚することはないと。なら、あれは一体何だったのか。あの夏の日々、俺は確かに奈波のことが異性として好きだった。奈波も異性として見てくれていた部分もあった。
「……たくさんあるから聞いてほしいな。あと、俺の方が年上だよな。俺もタメ語で話すから全然タメ語で大丈夫、だよ」
伊月さんはその言葉を聞いて、おぉと思わずでたような声を出した。
「八雲さんと同じで人との距離を掴むのが上手なんだね、七樹……くん。わかった。俺のことは雄大って呼んでもらえれば」
「おっけー。雄大くん。……じゃあ、どこから話そうかな」
「たくさん話してよ。奈波のこともっと知りたいし」
人との関わりが数ヶ月ぶりのため、初対面の人との免疫がなくなったように思えたが、どうやら、社会で染み付いたマナーと言葉は消えていなかったようだ。
友好な関係をひとまず築けた俺と雄大くんは奈波の話に華を咲かせることにした。
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