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最低なケモノと共に。  作者: 水浦奈介
【第一章】二人で過ごした夏の日々
12/15

第十話 ケモノ

こんにちは! こんばんは! おはようございます!

拙作を再びご覧いただいてくれた方、初見の方もありがとうございます!


昨日投稿の「第九話」はいかがでしたか?

今話で「【第一章】二人で過ごした夏の日々」は完結です。

「第9回オーバーラップWEB小説大賞」「第11回ネット小説大賞」に応募中です!

たくさんの応援・いいね・感想をよろしくお願いします!


それでは、楽しんでください!

 奈波(ななみ)の父親が捕まったことを聞いたのは奈波からだった。そのときの奈波はかなり取り乱していて、俺は落ち着くことを促すしか出来なかった。


 緊急で親戚で集まったのが、その翌日。当時、どんな状況だったのか、奈波や俺の意見や警察側の見解を聞いて考察するしかなかった。


「パパがそんなことするわけないと思っている……本当にどうして……」


 自分の父親が捕まるのはどんな気分なのだろうか。俺には一生分からない。


七樹(かずき)くんには、何か話してなかった? その……性についての話とか……」


 奈波の母親に聞かれた俺は言おうか迷った。奈波の父親が自分の娘を性的な目で見ているかもしれないということを。でも、奈波本人がそれを知って更にショックを受けるじゃないかとおもった。追い打ちをかけたくなかった。これ以上、奈波を傷つけたくなかった。だから、俺は。


「……酒に()って下品なことを言ってたりはしましたけど、それ以外の変なことは特になにも言っていませんでした。あとは……ごめんなさい。俺は分からないです」


 結局、俺はまた嘘をついた。だけどもう罪悪感は感じなかった。


 話は平行線となり、夜も遅いとのことで一晩祖父母の家で泊まることになった。奈波の母親からは「奈波は今すごく不安定だから安心出来る人が一緒にいてくれた方がいい」と言われ、俺は奈波のそばに極力いることを努めた。


「奈波、これ食べるか?」


 食後にアイスを手渡しても、


「……ありがとう。置いておいて」


 何か話題を振ろうとしても、だめだった。


 風呂が()いて奈波に入浴を促そうとしたが、奈波は寝ていた。


 布団もかけずに寝ていたものだから、寝相(ねぞう)の悪い奈波は服がめくれていて下着が見えそうだった。今さら下着で狼狽(うろた)えたりしないが、寝顔の可愛さとも相まっていたずらしたくなった。


「……奈波、風邪(かぜ)ひくぞ〜」


 ぷにぷにとほっぺたをつつきながら、呼びかけるが起きない。もう少し、いたずらしようと思い、指を胸元に当てようとすると、


「か……ずき……?」


 奈波とばっちり目が合ってしまった。


「起きないから起こそうとしてたんだよ……。風呂沸いたからな。あと、ちゃんと布団かけて寝ろよ」


 寝起きでぼけっとしている奈波は頭が回っていないからか、返事をするまで時間を(よう)した。


「……うん」


 奈波は数分の時間を要して、風呂場に消えていった。


 奈波、可愛すぎる。今日、もしかしたらと思うと酷く興奮した。──備えたものを買ってきているから。


 入浴を終えて、奈波が戻ってきた。目も覚めて落ち着いたのか、いつも通りだった。


 俺も入浴し、それから親戚たちと明るい話をして、寝ることになった。


 通されたのは、二人部屋。親戚の子どもはおらず、俺と奈波だけ。


 いつもとは違う状況にドキドキしていた。


「奈波、電気消すな」


「うん、ありがとう」


 背を向けて、お互い布団にはいる。このとき、欲望は体を動かしてくれなかった。数分の静寂(せいじゃく)があり、俺もそろそろ意識が遠くなりかけた頃。


「七樹……したい」


 と奈波から聞こえた言葉で俺の目は覚めた。


「奈波?」


 のそりと動く影があって、気がつけば、奈波は下着姿で俺に抱きついてきた。ふいにキスをされ、舌を絡ませてくる。


「か、ずきぃ……。しよう?」


 なぜ、奈波がこのとき涙を流しながら、俺を求めてくれたのか、今でもずっと理解出来ないでいる。


 ──夜中、二時を回った頃、布が擦れる音だけが支配する。奈波の控えめな(あで)やかな声と俺の荒い吐息。


 誰もが寝静まった夜中に。俺と奈波はひとつになった。


 寝苦しい熱気は俺を暴走させた。


 始まりは十一年前。俺が奈波を異性としてみたことから始まった。


 はじめての痛みに耐える奈波の表情が可愛くて。流れ落ちる涙が俺の男を暴走させて。荒い息遣いは俺か彼女か。──恐らく、両者だろう。


 これは、俺と奈波だけが知っているであろう欲望の物語。


 そして、俺の後悔と嘘と罪の物語。


 最後まで腰を振って、俺は身体中の欲望と快楽を一枚の避妊具(ひにんぐ)を介して吐き出した。


 それ以降、奈波に会う顔がなくなり、俺と奈波は会うことはなくなった。


 ──もし、欲望がなければ俺は幸せで生きてられたのか。


 そう願っても、もう過去は変わらない。


 ***


 甘く狂った欲望の夢は終わり、二十六歳の俺がまた帰ってきた。


 新幹線のなかは弱冷房が効いているはずなのに、背中にはびっしょりと汗をかいており、酷く呼吸が乱れた。


 何度も見た後悔の夢から俺は逃げ続けた。その結果が今、堕落的な生活(クズのまつろ)だ。


「もう、逃げないから」


 新幹線はまもなく、俺の地元の町の最寄り駅にたどり着こうとしていた。



*【第一章】二人で過ごした夏の日々〈完〉*

いかがでしたか?

これにて、「【第一章】二人で過ごした夏の日々」は終了となります。

YouTube等の動画編集もありますので、【第二章】は土曜日から開始したいと思っております。

いいね・感想頂けると喜びます!

それでは、また土曜日にお楽しみください!

YouTube等も見てくれると嬉しいです!

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