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13.町長出張中の成果

「カタリーヌ様。大丈夫ですか?」


ガタガタと揺れる馬車の中、ミラノがカタリーヌに問いかけた。

「あなた様のことが心配です」と書かれているかのような、とても不安そうな表情である。


「ええ……」


そんなミラノに、カタリーヌは短く返事をした。


年に一度の家族との団欒、新しい友達。

とても有意義で楽しい旅だったと喜んでいたところへ突然の夜襲。


幸せな気分は一転、一気にどん底へと突き落とされた。


「ハル様方が守って下さると仰っておりました。どうかご安心下さい」


うつむくカタリーヌを、ミラノはそう言って励まそうとする。


これには気落ちしていたカタリーヌも驚いた。


以前のミラノでしたら、きっとハルさんへの罵詈雑言が飛び出していたでしょう。

少なくともここでハルさんの名前は出ませんでした。

それだけハルさんを信用しているのですね。


そう思うと、カタリーヌは少し嬉しくなる。


「そうですね。ミラノ、ありがとう」

「……? 勿体無いお言葉です」


今の言葉で元気になるとは思っていなかったのだろう。

平静を装うミラノだが、内心では若干戸惑っていた。


結局、カタリーヌ一行は初日以降、野盗からの襲撃を受けることなく無事ハルジオンへと帰還した。



――



「おかえりなさい! ……って、みんなどうしたの?」

「何かあったんですか?」


カタリーヌ一行が到着すると、町の入り口でルージュとエリーから出迎えを受ける。


しかし、一行の顔色が優れないことにすぐに気付き、二人は笑顔を一転させ、心配そうな表情になった。


馬を潰さない程度には休みを挟んでいたものの、常に襲撃を警戒していた護衛陣は疲労の色が濃く、同様にずっと不安を感じていたであろうカタリーヌたちも憔悴していた。


「実は……」


そんなルージュに、ハルたちが事情を説明した。


「そうだったの……カタリーヌちゃん、ミラノさんたちも大変だったわね」

「皆さんが無事で何よりです」

「ハルさん方が守って下さったので、何の問題もありませんでした」


カタリーヌは精一杯の笑顔を見せ、ルージュたちを安心させようと努めた。


そんなカタリーヌの頭を優しく撫でねぎらいの言葉をかけるルージュ。


そして、


「野盗の件はギルドにも報告しておきましょう。この町の警備体制もかなりしっかりしてきてるから、町の中にいればきっとダイジョブよ。疲れてると思うけど、そんな疲れも吹き飛んじゃうようなビックニュースがあるの! もう少しだけ、私に付き合ってくれないかしら?」


胸の前でパンと手を合わせ、いつもの明るい調子で言うルージュ。


そんな彼女のあどけない笑顔に、一行の張り詰めていた心は解きほぐされる。


「ぜひ、お願いします」


カタリーヌもルージュ釣られ、作り物ではない素の笑顔になる。


「あのー、私たちもいいのかな?」


護衛に加わっていたトライアスの三名が、自分の顔を指差すようにしている。


「カタリーヌちゃんのお友達なんでしょ? 問題ないわ!」


グッと親指を立てるルージュの決定で、全員で開発工房へと移動したのだった。



――



「実はね、カタリーヌちゃんたちが不在の間も、私たちは色々と活動していたのよ」


工房へ向かう道中。

ルージュはカタリーヌ一行にこれまでのことを語り始めた。


なんと、ルージュとエリーは花の栽培に着手していたのだ。


「ほ、本当ですか!?」

「はい。私たちの知人の農家さんにはなりますが、既に計画を進めています」


驚き目を丸くするカタリーヌ。


それもそのはず。


今までは、町の外に植えた花の中や、近くの草原や森から必要な種類を摘んで使用していた。

そのため生産量が少なく、すぐに品切れになってしまっていた。


このままではせっかくの人気もすぐに冷めてしまうだろう。


花の香油・香水を作り続けられるよう生産ラインを整える必要があり、そのためには常に一定量の花が採れなければならない。


そうハルや領主から指摘されていたのだ。


帰還後に着手しようと考えていた工程に、ルージュたちが既に手をつけていたことに驚きを隠せないのだ。


流石はルージュさんですね。

エリーさんも頭がいいそうですし、本当にヒカリエの皆さんは頼りになります。


あまりの驚きに疲れなど吹き飛んだ。

カタリーヌの心はすでにルンルンである。


工房に着くと、そこにはアラーネとプラムが待っていた。

二人とも、どこか誇らしげに胸を張っている。


「カタリーヌさん、おかえりなさい」

「お疲れ様なのじゃ」

「ただいま戻りました。皆さんもお疲れ様です」


出迎えてくれた二人に応対するカタリーヌ。


一通りの挨拶が済むと、早速と言わんばかりにアラーネとプラムが話し始めた。


「アーたちね、新商品を作ったんだ!」

「そうなのじゃ! これは売れる。自信作なのじゃ!」


そう言って語られた内容は、またしてもカタリーヌを驚かせた。


香油、香水の研究、生産はソアラたちに任せて、二人は花を使った新たな商品を開発したのだった。


二人が目を付けたのは花の蜜である。

蜂系の魔虫が花から蜜を集めるということを知ったプラムの思い付きをアラーネがスキルを使用して実践したところ、とても甘みの強い蜜を採取することに成功した。


「工房の皆からの評判も高いのじゃ」

「絶対に売れると思うよ」


そう言ってカタリーヌの前に採れたての蜜が差し出された。

その芳醇な琥珀色の液体を前に、カタリーヌたちは思わずゴクリと唾を飲んだ。


「ま、まずは私が毒味を……」

「ず、ずるいですよミラノ! アラーネさん方が毒を盛るなんてありえません!」


我先にと密に群がるカタリーヌ一行。


スプーンで一口。


「…………んんっ!?!?」


口の中に広がるのは、砂糖とはまた違った独特の甘みである。


「甘い……美味しいです!」


初めての甘みに感動し打ち震えるカタリーヌ。

ミラノやハルたち、トライアスの三人も試食し、その甘さに驚愕している。


これは本当に美味しいです。

こんな美味しい甘味は初めて食べました。

パンにも合いそうですし、間違いなく売れます。


騒然となる工房内を見渡しながら、カタリーヌはそう確信した。


「アラーネさん! プラムさん! これはすごいです!」

「えへへ。そうでしょ?」

「フハハハハ! 我とアラーネのコンビネーションならこれくらい朝飯前なのじゃ!」


カタリーヌや他のみんなから称賛され、アラーネは嬉しそうに照れ笑いをし、プラムは鼻高々にしながら高笑した。


「皆さんのおかげで疲れが吹き飛びました! また明日から頑張りましょう!」

「おーーー!!!」


カタリーヌの満面の笑顔に、ハルたちは安心したようにホッと息をついたのだった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「この後一体どうなるのっ……!?」


と思ったら、


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